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2006/04/02

本の再販制度

 先日,新聞の特殊指定制度の話を書きましたが,新聞や本の再販制度というのもあります。値引き販売を認めない制度です。
 講談社,小学館などの大手出版社から中小出版社まで加入している出版業界の団体,日本書籍出版協会のホームページには,本の再販制度の必要性について,次のようにQ&A形式で載っています。

---<日本書籍出版協会のホームーページからの抜粋>----
Q.出版物(書籍・雑誌)の再販制度(再販売価格維持制度)とはどういう制度でしょうか?

A.出版社(メーカー)が個々の出版物の小売価格(定価)を決めて、書店(販売業者)で定価販売できる制度です。この制度は、独占禁止法で認められています。

Q.なぜ出版物に再販制度が必要なのでしょうか? 

A.出版物には一般商品と著しく異なる特性があります。①個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもち、②種類がきわめて多く(現在流通している書籍は約60万点)、③新刊発行点数も膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)、などです。
 このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です。書店での立ち読み風景に見られるように、出版物は読者が手に取って見てから購入されることが多いのはご存知のとおりです。再販制度によって価格が安定しているからこそこうしたことが可能になるのです。

Q.再販制度がなくなればどうなるのでしょうか? 

A.読者の皆さんが不利益を受けることになります。①本の種類が少なくなり、②本の内容が偏り、③価格が高くなり、④遠隔地は都市部より本の価格が上昇し、⑤町の本屋さんが減る、という事態になります。
 再販制度がなくなって安売り競争が行なわれるようになると、書店が仕入れる出版物は売行き予測の立てやすいベストセラーものに偏りがちになり、みせかけの価格が高くなります。また、専門書や個性的な出版物を仕入れることのできる書店が今よりも大幅に減少します。
---<引用終わり>-----------

 まず,種類が極めて多く,発行部数も膨大な書籍を消費者に届ける最良の方法が,書店での陳列販売だと言っているのですが,そうなんでしょうか? 現在では,ネット書店の扱いが増えています。種類が極めて多く,新刊発行点数も膨大である書籍を読者に届ける方法は,検索が出来,どんなマイナーな本でも数日で届くインターネットこそが最良の方法だと思います。この方法では,都市に住んでいる者も地方に住んでいる者も,同じように注文が出来,同じように本を手にすることが出来ます。置くスペースに限りのある書店では,「種類が多く膨大な発行部数」である本を全て陳列・紹介することなどとてもできません。
 また,再販制度がなくなると,遠隔地は都市部より本の価格が上昇すると言っていますが,ネット書店での注文では,そんなことはありません。
 さらに,本の発行がベストセラーに偏りがちになり,安売り競争が行われるようになるといっていますが,本当にそうでしょうか?
 先日このBlogで紹介した梅田望夫著「ウェブ進化論」によれば,ネット書店の代表であるアマゾン書店は,利益の1/3を,ベストセラーでなく,売り上げ数10万位以下などというマイナーな本で上げているそうです。再販制度のないアメリカでは,確かに書店同士の競争でダンピングが行われていますが,値引き販売されるのはベストセラー本であり,マイナーな本はダンピングしていない。ネット書店も,ダンピングの必要のないマイナーな本から多くの利益を得ているのです。実際,アマゾン書店などネット書店は,マイナーな本の紹介(ある本を買うと,それに関連するマイナー本の購入を推奨するなど)に勤めています。再販制度の有無とマイナー本の売れ行きとは,全く関係ないのではないかと思います。ネット書店では,利益が上がるマイナー本こそ大切に扱うことになり,再販制度が廃止されても,本の発行がベストセラーに偏りがちになって,本の種類が少なくなるとはとても思えません。
 日本書籍出版協会は,どうもネット書店のなかった10年以上前の状況を今に当てはめているようです。もしホームページから引用したQ&Aが再販制度反対の理由ならば,現在では全く説得力を失っていると言わざるを得ません。
 文化人など本の著者も,マイナーな本の出版機会の減少を理由に,再販制度廃止反対を唱える方がいますが,ネット書店の隆盛により,マイナーな本も以前より読者に気づかれる可能性が増え,ネット書店も,ダンピングの必要がなく,高い利益を見込めるマイナー本の出版を後押しする可能性さえあります。再販制度廃止になっても,マイナーな本はダンピングされないし,ネット書店の隆盛は,マイナー本にこそチャンスを与えています。

 ネット書店の隆盛について書きましたが,それではこれからの書店の役割は? これについては,こんな記事を書きました。

 「現代の書店の役割は?

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コメント

インターネットは出版のあり方を大きく変えつつあると私も思います。ひょっとしてグーテンベルクの活版印刷発明以来の大変革なのかもしれませんね。かく言う私もマイナー本を出版しました。アマゾンでどうぞ!!

投稿: ぼぶにい | 2006/04/02 11:27

 ぽぷにいさん,コメントありがとうございました。
 インターネットは,様々なことに影響を与え,いいにつけ悪いにつけ,様々な変化を社会にもたらしていますね。
 インターネットを使ったことのない人が,その知識の範囲内で意見を言っても,「今ではネットがあるからそれは見当違いだ」と思われることも増えているように思います。

投稿: Alice堂 | 2006/04/02 18:48

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