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2008/03/08

柄澤 齊「ロンド」

 創元推理文庫の「ロンド」。著名な版画家である柄澤齊氏の処女小説。
 画家三ッ桐の絵画「ロンド」は,過去にたった3日しか公開されず,三ッ桐の死後行方不明になっていた幻の絵です。ところが,ある公立美術館の学芸員のもとへ「ロンド,Part1」という,たった一日しか開かれない個展の案内状が届き,そこへ出かけてみたらダヴィッドの絵画「マラーの死」に見立てた殺人事件を発見する・・・。
 絵画にまつわる推理小説というのは,私の好みにあっているのですが,文章がいかにもくどい。文筆家ではない人が小説を書くと,とかくこのように地の文が濃い作品が出来上がるんだろうなと思えるようなくどい表現の連続です。そのためか,上下2冊組みになった大部の作品になっています。一例を挙げると,主人公が恋人の実家である小料理屋の前に立ってから椅子に座るまでに2ページ以上が費やされるのです。
 しかし読み終わってみると,その割に推理小説としてはあっけないという印象です。京極夏彦作品や二階堂黎人作品など,長いミステリーは世の中に多いですが,この作品はミステリーと関係ない事で長いのです。なにしろ,小料理屋の椅子に座るまで2ページ以上ですから(笑)。
 そしてこの作品は,下巻に入ったとたんに主人公達が犯人に捕らえられ,犯人もそこで明らかになります。その後は,犯人の犯行説明が始まります。つまり,この作品は,主人公の推理で犯人が割れるのではなく,犯人に主人公が捕らえられてしまうために犯人が明らかになるのです。ここへ来て,この小説が推理小説で無いことが分かります。だって,犯人の独白によって犯行の全てが明らかになるのですから。推理小説で無いとすれば,この小説をなんと呼んだらいいのか? 犯罪小説? 犯罪小説というと,もっと足が地に付いた事件を扱うようなイメージが私にはあって,この作品を犯罪小説と呼ぶのはちょっと抵抗がある。ネット上のあるブログでは,幻想小説といっていました。幻想小説というには,結構現実的な感じもあります。なにしろ,結局,犯行動機は金と欲,それに復讐です。まあいずれにしろ,読み終わってから振り返ると,文章は濃いのだがミステリーとしては濃いとはいえず,ミステリーとしてはもう一つ物足りないという感想ですが,読んでいる間は結構面白かったですよ。
 本の装丁は,もちろん柄澤齊氏自身の版画です。

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