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2009/10/09

後藤 均「グーテンベルクの黄昏」

Gotou 後藤均の「グーテンベルクの黄昏」を読みました。前作,「写本室の迷宮」に示されていた,「過去」の事件を描くものです。

 前作に引き続き,現代で謎を解く富井教授,教授の読む手記の作者,星野画伯が登場します。前作と同じように,星野画伯が第二次世界大戦中にヨーロッパで遭遇した事件を手記にしたため,その手記が星野画伯の娘を通じて富井教授の元にもたらされ,富井教授が謎を解く・・・と思っていました。ところが,今回の作品では,そのような構成ではありません。

 作中に描かれる謎はいくつかあります。

 (1) 最初の方に描かれる,英領ガ—ンジー島での3件の殺人事件
     そのうちの一つは,塔の上での,一種の密室状況での殺人事件です
 (2) 「ロムルス」とは何か? どうも人を指すらしいんですが・・・。
 (3) ベルリンの防空壕での,ドイツ人外交官夫妻密室殺人事件

 しかし,そのうち(1)と(2)は,本の半ばには真相が分かってしまうのです。しかも,誰かの推理ではなく,事情を知る者の述懐によって真相が明かされます。(3)の方は,星野画伯によって謎が解かれ,手記の中で真相が示されます。これでは富井教授の出番が無いじゃないかと思ったら,実際に富井教授はこの本の半ばにインターミッションという感じで出てくるのと,さらにもう一回,最後に出てくるだけです。でもさすがに,最後には,「ロムルス」に関する更なる裏の謎が教授により解かれます。しかしこの作品,全体の印象として,本格推理小説とは言い難いものです。では何かと言えば,一種の冒険サスペンス小説と考えるのが適切でしょう。星野画伯がある時はドイツ側,ある時はイギリス側と接触しつつ,命さえ脅かされる中,戦争中の英国,ドイツを舞台に活躍します。しかし,なにしろ前作でその後の星野画伯が描かれていますから,命を落とす事が無いのは分かっている訳で,安心して読んでいられると同時に,幾分サスペンスが弱まります。
 以上のように,密室殺人が扱われるものの,本格推理小説味が少ないという不思議な印象の作品ですが,歴史サスペンス小説として読めば,とても興味深く面白い作品でした。

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