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2012/12/06

北森鴻の「邪馬台」

Yamatai

 以前,北森鴻の「邪馬台」の電子ブック版を買った事を記事にしました。本当はKindle Paper Whiteが手に入ったら読もうと思って読まずに取っておいたのですが,最近別の「邪馬台国」に関係する本を読んで,我慢できなくなってついにiPod touchで読んでしまったのです。そして読んでみて,正に「巻を措く能わず」という作品でした。
 下北沢の古物商「雅蘭堂」の越名集治が,ある骨董市で長火鉢を競り落とす。調べてみると,それには隠し引き出しがあって,その中から「阿久仁村遺聞」という書物が出てきた。それを越名が知り合いの民俗学者,蓮丈那智准教授に送った所から話が始まります。
 阿久仁村というのは,鳥取県と島根県の県境にあった村で,今では跡形も無く消滅している村だった。明治維新で鳥取藩が松江藩(島根県)に吸収合併させられ,その5年後に再度分離されたが,その時には村はなくなっていた。
 阿久仁村遺聞という書物をめぐり,越名,蓮丈准教授,その研究室の助手,内藤三國と佐江由美子が,その文書を世に出したい勢力と,その書物を葬りたい勢力の争いに巻き込まれていく・・・・・。
 基本的には蓮丈那智シリーズの一遍ですが,北森ミステリーで単独に主役を張っている名探偵達,越名集治や宇佐見陶子も重要な登場人物として現れ,しかも宇佐見陶子シリーズの一遍「狐闇」の後日譚の性格を持っている作品です。
 さらにそれに邪馬台国の謎が加わり,最後に殺人事件も起こる,かなりの大長編推理小説です。本格派推理小説の味わいのある作品ですが,解くべき謎が書物の謎であり,それにまつわる二つの勢力の謎であり,読み終わって考えてみれば,どちらかというとサスペンス小説といえると思います。
 邪馬台国も扱われますが,「邪馬台」という作品名はどうでしょうか。メインはあくまでも「阿久仁村遺聞」なのです。しかし,邪馬台国がどこにあったか,本書では指摘していますし,当時世界に類がなかったと思われる卑弥呼の超高層宮殿と卑弥呼の墓がどこにあるかも指摘しています。
 本書のメインとは言いがたい邪馬台国ですが,本書では邪馬台国の卑弥呼と近畿の大和政権は別のものとしています。しかし,どちらも軍事的に周辺を圧倒して即位した西欧流の王ではなく,周辺各国や周辺の豪族によって「共立」された王であり,邪馬台国と大和政権の両方が同じ政権体質を持っていた事を考えれば,本書を読んでもなお邪馬台国と大和朝廷はシリーズに続いている同じ王朝であるような気がします。
 本作品は「邪馬台国」を目当てにして読むと多少肩すかしを食らうかもしれませんが,ミステリーとしては極上品だと思います。

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