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2013/02/25

綾辻行人のホラーミステリー,「Another」

Another

 綾辻行人のホラーミステリー,「Another」を読了しました。
 この作品はホラーミステリーと言われていますが,以前紹介した,やはりホラーミステリーと言われている竹本健治の「狂い壁 狂い窓」とはまた違ったタイプのホラーミステリーです。「狂い壁 狂い窓」はホラー的な雰囲気を持つものの,最後には全て合理的に解決されて,まぎれもなく推理小説として終わります。ところが,「Another」には合理的に解決できない設定があります。
 この作品の主人公は,東京の私立中学に通っていた中学生,榊原恒一。この作品はこの少年の目線で語られます。
 彼が気胸という病気になり,その療養の為と大学教授の父がインドに長期フィールドワークに出かける事から,母の実家である夜見山という街の中学校に転校してくるところから物語りが始まります。4月から転校する筈が,病気の治療の関係で5月から夜見山北中学の3年3組に編入されますが,そのクラスにおかしな雰囲気がある事に気がつきます。一人の女子生徒が,生徒全員どころか先生達にも無視されている。まるでその女子生徒,見崎 鳴が,まるで「いないもの」であるかのように・・・・・。いじめではない様ですが,何だか鳴を怖れている様な異様な雰囲気がクラスの中にあるのです。
 やがて毎月凄惨な事故や病死や自殺が相次いで,その事から鳴を「いないもの」として扱う理由が明らかになります。クラスに死者が紛れ込んでいて,そのために毎月災いが起こるのを止めるために,その死者の存在を打ち消す様に,クラスの一人を「いないもの」として扱うのです。それは歴代の3年3組の試行錯誤の結果,災いを起こさない為に行われてきた方法なのです。もちろん「いないもの」となる者の同意の上です。一種のおまじないですが,恒一が編入した年は彼女ひとりの「いないもの」では惨劇がおさまらなかった。そこで,恒一も「いないもの」に就任し,二人体制でなんとか災いが起こらない事を願うのですが,やはり災いが起こってしまいます。その段階で,「いないもの」のジンクスが破れたので,二人を「いないもの」として扱う理由もなくなり,いままで仕方なくシカトしていたクラスメイト達とも以前と同じ様につきあう事になって,災いを止める方法を彼ら達と探っていく事になります。
 ここまでが上巻の部分です。下巻では,15年前の年,年の初めには起こっていた災厄が年の半ばで止まった事がわかり,なぜ止まったのかその時の事情を探っていきます。やがてそれが,今年の「死者」が誰か探すという事につながっていき・・・・・。
 以上の様に,この作品では,物理的,合理的に解決できないシチュエーションの中で物語りが進行していきます。しかし,そのシチュエーションとルールを受け入れれば,あとは立派なミステリーです。ただ,「死者」探しが推理によって行われるのではないので,同じ作者の館シリーズのような「本格推理小説」ではなく,サスペンスミステリーというジャンルになるんでしょうね。
 しかしながら,「死者」探しを推理によって行う事もできたように思います。終盤,今年の「現象」が恒一の転校後,つまり5月から始まったのではなく,実は4月から始まっていたのが分かった時点で,4月は生徒の机の数が足りていたという事実から,今年の「死者」が誰であるかを推定する事が出来たと思うのです。生徒の机の数が5月までの間は足りていた事は,恒一自身が物語りの中で言及していましたが,そこから進んで今年の「死者」が誰であるか,推理するところまでは至っていませんでした。まあ心情的に恒一がそこまで推理するのは無理だとしても,クラスメイトの勅使河原なり望月なり,または学校の千曳司書など,恒一と鳴以外の誰かによって「死者」が誰であるかを推理する事も出来たのです。もしそうしていたら,ホラールールを持った本格推理小説という雰囲気になっていたと思います。その点がちょっと残念です。
 この作品,アニメにも実写映画にもなっていますが,本格推理小説ではなく,サスペンスミステリーであるが故に映像化しやすかったのだと思います。アニメは原作をうまく膨らまして,非常に面白い作品に仕上がっているという噂を聞いたので,こんどぜひ観てみたいと思います。
 さてこの作品,読む前に,私は予備知識として本格推理小説でない事は知っていました。しかしもしそれを知らずに読んだ場合,なにしろ館シリーズで有名な本格推理小説作家,綾辻行人の作品ですから,きっとたくさんの死亡事件の真犯人とそのトリックを探しながら読んでいたでしょう。そんなつもりで読んだ場合,終盤まで読んで,ある種の「がっかり感」に襲われるかもしれません。なにしろ沢山の死亡事件には特定の犯人がいる訳ではなく,あるきっかけから夜見山という街がより死に近づいたという「超常現象」の結果なのですから。未読の方は綾辻行人の名前に惑わされず,あくまでもホラーサスペンスとして読んでくださいね。そうすれば,面白い事請け合いです。

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