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2014/09/16

青崎有吾の「水族館の殺人」

Suizokukan

 「体育館の殺人」に続く青崎有吾の長編本格推理小説,「水族館の殺人」を読みました。
 横浜市内にある,小さいながら地の利によって人気のある水族館が舞台です。そこのイルカショーの登場人物でもあるイルカの飼育員が刺殺されます。しかも,鮫のプールの上に架けられた陸橋で刺殺され,そこから鮫のプールに墜落したために死体の上半身は鮫の餌食となり,それを水族館のお客が水槽越しに見ることになります。つまり殺人が起こった時刻が,多くの人によって特定されるわけです。ところがその時間,館内に居た関係者には,全員アリバイがありました。監視カメラによって,鮫プール上の陸橋を含む従業員エリアへは,外部から人が入ってこなかったことがはっきりしています。そんな状況で,いったいどうやって犯行が行われたのか?・・・というのがメインの謎です。
 おりしも犯行時,前作「体育館の殺人」の舞台となった神奈川県立風が丘高校新聞部がこの水族館を取材していて,さらに前作の警部,刑事がこの事件の担当になったために,前作での手腕を買っている警部に呼び出された風が丘の高校生名探偵が活躍することになります。といっても,このものぐさな名探偵,初めは外へ出るのはイヤだなどといっていたのですが。
 関係者全員にアリバイがあるのならば,この派手な殺人事件の実際の犯行時刻は,水槽越しに目撃された墜落時刻と違うんじゃないのということになります。私は横溝正史の金田一耕介の登場しない有名な長編を思い出し,あれ式の時間差トリックがあったのだよと思いました。
 実際のところ作中の名探偵もそのように考えていることがすぐに明らかとなり,実際の犯行時刻を推理で特定したら,今度は関係者全員にアリバイがなくなってしまいました。全員のアリバイ有りから無しへの一瞬の変化は,なかなか鮮やかです。
 この作品,真犯人が明らかになってみると,被害者に直接関わる動機による犯行ではなかった事が明らかになります。前作「体育館の殺人」でも,裏の犯行動機は被害者とは関係ないもので,ここら辺がこの作者の特徴なのかなと思いました。まあまだ2作しか長編はないので,それが特徴とまでいえるのか,いささか疑問ではありますが。
 作者の特徴と言えば,些細なことから推理を展開して真相にたどり着くという方法の方が特徴的かもしれません。
 この作品,犯人に余り思い入れを抱かず,前作に負けず劣らず面白い本格推理小説でした。

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