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2014/11/16

有栖川有栖の「女王国の城」

Queen

 この程読了した有栖川有栖の「女王国の城」は,おそらく有栖川有栖の最も長い推理小説ではないかと思います。文庫版は(これを電子書籍化したKindle版も)上・下巻に分かれています。
 有栖川有栖の作品は,大学の推理研部長である江神二郎を名探偵とする学生アリスシリーズと大学教授である火村英生を名探偵とする作家アリスシリーズがあって,双方とも,他方をそれぞれのアリスが書いたという設定になっています。
 「女王国の城」は学生有栖シリーズの一編。推理研部長の江神二郎が人類協会という宗教団体の本部に行ったまま連絡が取れなくなります。この宗教団体は,開祖が洞窟の中で宇宙から来たペリパリという宇宙人の姿を見て,その声を聞いて始めた宗教です。現在では若い女性が3代目の代表となっています。深い山中の教団本部のある村は,住人の大多数がこの教団に関係しているという宗教都市です。教団本部は莫大な金額を投じ,著名な建築家が腕を振るった空中に作られた三つのUFOのような円盤形の建築から成る豪勢なものです。
 その中に消えてしまった江神部長。何の為に行ったのか,何をしているのかも分からない。という事で,有栖達推理研の部員達はこの教団本部に向かいます。
 なぜかはじめ江神と会う事を拒否されていた彼らもやがて教団建物へ招かれ,江神と会う事ができます。そうするうちに教団内部で殺人事件が起こり,今度は外部へ出られなくなります。殺人事件は教団内部で3件おこります。しかし何故か教団は警察に知らせようとしない。2日後には警察に届けるという教団。有栖達は反乱を起こし,教団建物から脱出をはかり・・・・・・。
 読んでいく途中の謎は,殺人事件の動機の謎,空港の様に厳重に入場管理がなされている教団にどうやって凶器である拳銃が持ち込まれたのか? 教団の殺人事件の遥か前に起こった密室事件の謎とその事件が今回の教団の殺人事件とどのように関係しているのかなどなど。謎は幾つかあるのですが,不思議感がちょっと希薄で,ワクワクするという感じは少なかった様に思います。それよりも有栖達の教団建物からの脱出のサスペンスの方が勝っていたという事かもしれません。
 教団内の殺人事件で使われた拳銃は,以前の密室事件に使われたものだったと分かるのですが,その密かな保管場所は想像がつくものの,そこにどのようにして置かれる事になったのかは分かりません。その解決は四次元的な解決ともいえるもので,ある盲点を突いたもので,ちょっと面白かったです。
 この教団はオープンで宗教色の少ない教団である事は最初から窺われましたが,その通りの教団であった事が分かり,殺人事件を警察に連絡しなかった理由も「そんな事情なら仕方ない」と納得できる理由で,最後の最後にしか登場しない若い代表もひとかどの人物であった事も分かり,めでたしめでたしで終わります。
 前述の様に長大な推理小説ですが,途中の謎の醸成という推理小説的なサスペンスよりも脱出劇の冒険小説的なサスペンスが勝っており,その点読者への挑戦状のある本格推理小説としてはどうなのよと思う所はありますが,そこそこ面白く読めました。まあ上述の様に,途中の謎がちょっと薄めのものだったので,最後の一気呵成の江神部長の推理もやや軽い感じではありました。

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