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2015/11/03

河野 裕「つれづれ,北野坂探偵舎 トロンプルイユの指先」

Yubisaki

 河野 裕(こうのゆたか)の「つれづれ、北野坂探偵舎 トロンプルイユの指先」は,つれづれ北の探偵舎シリーズの5作目,先日紹介した「つれづれ北野坂探偵舎 感情を売る非情な職業」に続く作品です。北野坂探偵舎シリーズについては,例によってこのリンクから前の記事を参照していただくとして・・・・・,今回は佐々波,雨坂,それに小暮井ユキが紫色の指先の世界に入り込んでしまい,その紫色の指先の内側の世界での物語です。
 このシリーズは,第1作から第3作までは,謎や事件解決の依頼があってそれを解く物語の中に,このシリーズ全体を通してのテーマである,主人公達の過去の交通事故と紫色の指先の関係と謎,さらに雨坂が真にハッピーエンドな小説が書けるのかという話が従としてちりばめられた物語でした。だから,各作品単独で解決があり,単独でも読むこともできるという小説になっていました。
 ところが,4作目から今回の5作目,おそらく将来出版されるであろう6作目は,紫色の指先とそれに取り込まれた人物,というか幽霊達,それに佐々波,雨坂,小暮井ユキが関わっていく物語で,むしろ4〜6巻というより一つの作品の上,中,そしておそらく下巻というものになっています。その意味で,今回の「トロンプルイユの指先」は将来の6巻目に続くブリッジのような作品と言えるでしょう。
 今回の第5巻目は,まず小暮井ユキが,彼女に取り憑いている幽霊,雨坂ノゾミとユキが昔飼っていたカナリア「ブランコ」に導かれて,紫色の指先の世界に入り込むところから始まります。アマゾン書店の予告では,雨坂続(朽木続)が書いた小説「トロンプルイユの指先」の舞台に行くと書いてあったのですが,正確には紫色の指先の内部世界です。前作,「つれづれ,北野坂探偵舎 感情を売る非情な職業」で描かれた,雨坂続の交通事故から続く7年間の昏睡状態の時に居たのがこの世界。小暮井ユキも,現実の世界では昏睡状態に陥ります。どうも現世と紫色の指先の世界の関係は,そういう仕掛けになっているらしいのですね。雨坂続が紫色の指先の世界に居た時に書いた小説を思い出しながら,再度現世で書いたのが「トロンプルイユの指先」でした。
 さて,現世で昏睡状態に陥った小暮井ユキを追って,佐々波と雨坂続が紫色の指先の世界に行きます。佐々波が口八丁で,これまでの作品にも登場していた幽霊,レイニーを自分に取り憑かせて,移動したのです。
 佐々波はそこで,第2作「つれづれ,北野坂探偵舎 著者には書けない物語」に描かれた交通事故で一緒だった,長谷川教授,雨坂ノゾミの母親で続の姉である雨坂香苗,その夫である雨坂聡一郎,それに紫色の指先自身に出会います。一方,小暮井ユキは,第1作「つれづれ,北野坂探偵舎 心理描写が足りてない」で登場した同級生の少年,星川唯斗に再会します。
 ここでいろいろな事が起こり,結局,もうしばらくこの世界に残るという雨坂続を残して,佐々波と小暮井ユキは現世に帰ってきます。聡一郎の書いた完璧な小説「声」より前に,雨坂が書く「トロンプルイユの指先」の続編(難航している)を紫色の指先に読ませるために,佐々波の逆転の発想の時間稼ぎによって紫色の指先が彼らと共に現世にやってきます。
 さて次回作は,紫色の指先の世界に残った雨坂続が小説を完成できるのか? 現世にやってきた紫色の指先と佐々波の活躍は? 紫色の指先は自分を取り戻せるのか? 紫色の指先の未練とは何か? 紫色の指先の5つの問いかけ,「サン・ジェルマンの薬に癒せない病とはなんだ?」などはどんな意味があるのか?  著者自身のツイッターによると,次回作が最終作?という事なので(?付きなのは,分量の点で,1作におさまるかどうかという意味です),まだまだ楽しみが続きます。

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