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2016/08/25

殊能将之の,名探偵 石動戯作シリーズの第一作目,「美濃牛」

Minoushi

 先日紹介した「鏡の中は日曜日」の記事の中で,「私は殊能ミステリーとは肌が合わないような気がします」と言っておきながら,殊能将之の第二作目「美濃牛」を読みました。名探偵 石動戯作シリーズの第一作です。
 雑誌の編集者から,病を治す奇跡の泉の取材を依頼されたフリーライターの天瀬啓介とカメラマンの町田亨が,岐阜県美濃にある暮枝という集落に赴くところから話が始まります。その奇跡の泉は,亀恩洞という鍾乳洞の中にあるという話ですが,鍾乳洞自体がこの村の大地主 羅堂家の持ち物になっています。
 さてその村で待っていたのは石動戯作という男。奇跡の泉をネタにして,この地を開発してレジャーランドを作ろうとしている大手デベロッパーのために仕事をしているという男でした。まあ私は,既に石動シリーズを2作程読んでいるので,石動が探偵である事を知っていますが,この作品が石動シリーズ第一作ですから,当時の読者は彼の正体を知りません。はじめはなんだか胡散臭い人物だと思うばかりでしょう。今回石動は,大手デベロッパーに勤める大学の先輩の紹介で,地主の説得のために働いているのです。
 亀恩洞だけではなく,レジャーランド予定地の大部分は,大地主羅堂家の持ち物です。羅堂家当主は,半身不随で身動きが取れない車椅子生活の老人,羅堂陣一郎ですが,ほとんど隠居状態であり,実務はその息子で牛を育てている真一が取り仕切っています。真一の息子である青年哲史と高校生の娘窓音が村に住む羅堂家の面々。この村にはよそ者として,奇跡の泉目当てに集まった人々も村で暮らしています。しかし彼らの希望むなしく,奇跡の泉は真一の反対で公開されていない・・・。
 やがて真一の26歳になる息子,哲史の首なし死体が発見され,事件が始まります。ここまでで約1/3が費やされますが,横溝正史ばりの村の紹介で,飽きる事がありません。
 警察の捜査が始まりますが,石動がなにかと警察の捜査に介入し,迷惑がりながらも憎めない石動を警察も排除できません。
 ここで名古屋市に住む羅堂陣一郎の次男,真一の弟,不動産業の善次と三男で医者の美男も葬式にやってきて登場人物に加わります。
 さらに起こる第二の殺人で真一が,第三の殺人で善次が殺害されます。羅堂家の人々が殺害されていきますが,それはこの地に残るわらべ唄になぞらえているようです。童謡殺人!
 実はこの作品,冒頭のプロローグで犯人の名前が明らかにされています。羅堂家当主,陣一郎の庶子である鋤屋和人という人物です。
 物語が2/3を過ぎると,この鋤屋和人の存在が明らかになり,村のだれが鋤屋和人なのかがという興味が加わります。
 まあ最後には,石動の推理によって事件は解決するわけですが,サプライズエンディングといっていいでしょうね。思いがけない人物が真犯人として指摘されます。真犯人は,やはり鋤屋和人で間違いありませんでした。
 なかなか事件が起こらないとか,長いという不満をいう方がいますが,すらすら読めるし,様々な事件が起こり,それが結局本筋とは関係ないとしても,途中ではいわくありげで,私は面白く読みました。
 物語は天瀬や刑事の視線で語られる部分が多く,石動は全く説明役でそれ程影が濃いわけではありませんが,憎めないキャラクターでした。
 今回の作品は横溝正史の八つ墓村を髣髴とさせる本格推理小説で,犯人である鋤屋和人は村の誰なのかという興味,殺人の動機は何なのという興味が持続し,なかなか面白い作品に仕上がっていました。最後に明かされる真相は,最初の哲史事件に関するミスディレクション,それにより実行犯が見事に隠蔽されるテクニック,心憎いトリックでした。

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