2017/02/13

電子書籍の購入は,作家の応援にならない?

Ebook ネット上に,「電子書籍の購入は作家の応援にならない」という記事があって,それは何故?と思って記事を読んでみました。
 その理由は,市場規模の点から,現状電子書籍は出版関係者の眼中に入っていない。したがって,電子書籍の売れ行きは続刊の出版決定に寄与しないのだという話でした。「だから紙の本を買って!」といっているのですが,私はむしろ「もっと電子書籍を買って,出版関係者が電子書籍の方を向くようにして!」という訴えかけをすべきではないのかとおもいます。
 「書籍の刊行点数が近年過剰に増加していることから,発売直後の売上げが伸びなければ書店に置いてもらえない。」と記事で言っており,だから「発売直後の売上げが大事なのだ」という事なのですが,それならば電子書籍を買って欲しいという事になるのではないですかね。
 日々の暮らしがかかっているのだから,目先の事にこだわる気持ちも分かるが,ちょっと目先の事に拘泥しすぎのようにおもいます。
 発売直後の売上げが大事というのは,「本が長く売れる事は作家にとって意味がない」といっているように聞こえます。それはおかしい。その本に長い間世の中に受入れられるのは,作家冥利に尽きるのではないかとおもいます。
 出版社が出版当初の売上げしか興味が無いのは,古本屋の存在があるからとも考えられます。出版社にとって,出版当初しか本は売れない,後は古本屋から購入される・・・・・。それならば出版社も電子書籍に注目すべきでしょう。電子書籍は印刷の必要がなく,一回社会に出せば放っておいても売れるときは売れる。ロングテールでの需要に応えるのにもってこいの存在です。電子書籍の隆盛は,出版社と作家にとって,古書店から本の販売を取り戻すチャンスでもあります。
 古書店は無くなっていく? いわゆる新古書,比較的新しい古本は廃れるでしょうが,古書店らしい古書店は残り,おそらく古書店同士の競り市は残るでしょう。昔は古書店といえば,そんな店だったのです。ブックオフ以前の時代への回帰です。
 しかし出版関係者って,どうしてもこれまでの紙文化から離れられないらしい・・・。
 しかし出版関係者が紙の本にこだわるのは,出版業界独特の経済的な理由もあるらしいのです。紙の本の流通過程での取次商社の金融機能について,某サイトに掲載されていました
 出版社が新刊の印刷をすると,売れる売れないに係わらず取次ぎ商社から印刷部数に応じてお金が支払われる。そして結局書店から返本された時点で精算され,売れ残った分は出版社が引き取る事になります。しかし出版してから精算するまでの間,本来の売れ行き以上のお金を出版社が握る事になります。そのお金で次の出版を行えるわけで,そんな自転車操業的な事が行われているらしいのです。まあいってみれば,ある期間出版社は取次ぎ商社から一時的にお金を借りている状態が生まれるわけです。その金融で出版社が回っているという事で,電子書籍ではそれができないのです。
 この不思議な金融の仕組が,出版社が紙にこだわる事につながっているらしいのですね。こういう話を聞くと,何と因果な業界なのかと思います。そんな仕組みをありがたがる事によって,紙の本からは離れられないし,ある意味電子書籍を敵視する事になるのだし,ロングテール部分(長期間の需要)を古書店に逃しているのです。

(写真は,フリー写真素材サイト「足成」より。)

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2017/02/01

ブックオフは2期連続で営業赤字

Bookoff 「ブックオフ、2期連続で営業赤字に 書籍など販売低調の苦境」という記事がネット上に載りました
 ブックオフは,昔はよく利用していたのですけれど・・・。
 昔は古本でしか手に入らなかった,少し前に出版された本も,最近は電子書籍で手に入ることもあります。すでに絶版になっている古本も,ネットで検索してネット上の古書店で買う方が確実に手に入ります。 そんなこんなで,最近はすっかりブックオフともご無沙汰になってしまいました。
 ブックオフもネット上に古書店を持っていますが,店を整理して古書店兼倉庫として使う程度を残し,ネット中心になっていくのではないか? まあ古本の買取りに,今の店に代わるシステムが必要なのかもしれませんが。
 しかしそれでも,出版社が古い本を積極的に電子化するようになれば,やがてそちらに持って行かれるかもしれません。逆に言えば,古い本を電子化する事で,出版社は古本需要を取り込めると思うのですが,どこかの出版社でまずやってみないでしょうかね。

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2017/01/09

岡田秀文の「伊藤博文邸の怪事件」

Kaijiken

 岡田秀文の「伊藤博文邸の怪事件」を読みました。
 明治の元勲,伊藤博文邸で起こった殺人事件。新たに伊藤家の書生となった二人のうち一人が語り手,もう一人が探索します。
 最後まで読めば,サプライズエンディングがあり,見事な推理小説であったと思います。
 しかし,どうも途中の謎的な興味が薄い。完全な密室ではないが,監視者等を考えると密室状況といえる殺人事件を扱っているものの,これが密室事件で一番やってはいけない方法で解決されています。まあ密室がメインではないものの,肩透かしといえるでしょう。
 クリスティーはありふれた屋敷の殺人事件を扱っても,途中の謎的サスペンスは半端なく,どの作品も謎好きな私好みの推理小説になっていますが,それとは逆の行き方ですね。
 最後のサプライズエンディングはこれまでも前例があるもので(例えば近年では森博嗣氏の長編),「ああ,あの趣向だったの」という感じで,サプライズエンディングとして感心するところまではいかない。
 立派な推理小説ではありますが,私のような謎好きには今一歩といえましょう。

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2017/01/05

小島正樹「祟り火の一族」

Tataribi

 小島正樹の「祟り火の一族」。
 劇団に所属する三咲明爽子が応募したアルバイトは,成城の屋敷で包帯姿で寝ている男に6つの話を語る6人の女性の一人。その6つの話は,人柱として煉瓦の橋脚に埋められた少女の幽霊,炎に包まれた家で首を吊った男の顔が溶けだし,その髑髏から緑色の少女が飛び出す,などなど怪談話。
 明爽子は好奇心から,わざと屋敷にハンカチを忘れてそれをとりに戻る。こっそり屋敷に忍び込み,そこで見たのは,包帯男の治療の現場。その顔は赤く焼けただれていた。
 驚いて逃げ帰った明爽子は,後輩の群馬県警の刑事,浜中康平に相談する。浜中は村の駐在所勤務を夢見る和み系警官のはずが,いつもひょんな偶然から手柄を立てまくり,県警本部長賞の常連,いまや若手ホープ刑事として自身の意志とは逆に高い評価を得ている人物です。
 明爽子と浜中が成城の屋敷を見張っている時,そこから出てきた高校生くらいの少年を尾行する。この尾行が楽しい。浜中刑事は確かに敏腕らしく,尾行も堂に入ったもので,明爽子はちょっと感心する。
 浜中のもっている幸運の力も借りて,やがて少年と尾行者2人は栃木県の山の中の閉鎖された硫黄鉱山へたどり着く。
 浜中刑事の非番も終わり,ここで明爽子のパートナーは浜中の知り合いの探偵,小島作品ではおなじみの海老原に変わる。
 別の日,尾行した少年を栃木の廃鉱で待つふたり。そしてやってきた少年は,池ノ井恭助と名乗る。池ノ井家は,この鉱山のオーナー,狩野家に代々仕える一家らしい。やがて少年が語る少年の不思議な体験。三分割された屍体,後ろ向きに進む幽霊,三本腕の男,空から降る屍体,墓から蘇って水垢離をする死人など。
 前述の6つの怪談話も実際に起こった事で,それに加えて少年が語る不思議な話。最後には海老原がこれらのたくさんの謎を解いていく。
 そして最後に明かされるこの物語全体を覆う作者が読者に仕掛けたトリックの驚愕。最後に登場して主人公達を間一髪で助ける浜中刑事。その功績により,全く本人の意思とは逆に,今回は群馬県警と栃木県警の両方の本部長賞を授与されてしまう。
 多少の不自然は何のその,やり過ぎ小島正樹氏の面目躍如といった推理小説でした。

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2017/01/04

最近の読書頻度,量の増加

Ebooks 「電子書籍購読者の購入金額、読書の頻度と量が増加、メリットは「かさばらない」「手軽に購入」が過半数~ネオマーケティング調査」という記事をネット上で見かけました
 確かに,電子書籍購入のハードルの低さは特筆ものです。書評などを読んで,欲しいと思ったらもう手に入っている。
 紙の本はそうはいきません。明日書店に行って買おうと思っても,その明日になれば熱が冷めている事も多いのです。
 古い本が電子書籍になっている事があります。そんな本の購入には,これまで古本屋を使っていたわけですが,それもいまでは電子書籍につぎこんでいます。
 記事の様に,読書の頻度と量は確実に増えているし,書店・古書店に支払っていたお金が,アマゾンと出版社に支払う事になっています。
 古書店で流通しているような少し前の本も,出版社がせっせと電子化すれば,出版社は新刊本でなくても,過去の遺産で商売ができると思います。

(写真は,フリー写真素材サイト「足成」より。)

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2016/12/28

アメリカのベストセラー「ブロックチェーン・レボリューション」

Blockchain_revolution

 アメリカでベストセラーになったという「ブロックチェーン・レボリューション」。ビットコインの基本技術であるブロックチェーンについて書いた本です。
 ブロックチェーンについては,私は社会的に大変労力とコストと時間がかかるシステムだと思っています。ブロックチェーンに新しい取引を追加する事,それをマイニングと呼びますが,それを行うにはスーパーコンピュータを動かさなければならない状況になっており,その使用電力たるや莫大で,だから電力の安い国,中国でもっぱら行われています・・・というか,中国でしかできなくなっています。しかし
 そこら辺のところを知りたくて,この本を読んでみました。
 私の疑問「ブロックチェーンは社会的に大変労力とコストと時間がかかるシステムではないのか?」についてちゃんと言及していました。
 矢張りブロックチェーンのプルーフオブワークはコストがかかるシステムと言わざるをえず,コスト問題を回避するには,別の仕組みに変えざるをえないようですね。
 リップルなどはマイニングではなく承認者を置くシステムを考えているようで,普通の承認システムとどう違うんだろうということになるようですwww。
 将来コンピュータ技術(主に冷却技術)が発展すれば,少しはプルーフオブワークのコストも下がるのではないか,程度の事しか言えないみたいです。
 この本は,そんなブロックチェーンの欠点も書いてある本であるところが秀逸です。でも,ブロックチェーンの「明」の部分のきらめきに目がくらみ,どのくらいの人が「闇」を認識するのでしょうか?
 ちなみにこの本,電子書籍化されています。 

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2016/12/26

芦辺拓「少女探偵は帝都を駆ける」

Shojyotantei

 芦辺拓の「少女探偵は帝都を駆ける」を読みました。表題作の中編1作と短編6作を収めた短編集です。
 舞台は昭和11年,表題作の中編は,主人公の女学校生,平田鶴子が修学旅行の最中,並走した列車で起こったもめ事を目撃したところから話が始まります。鶴子の列車に逃げ込んできた列車ボーイ姿の少年,それを追うルパシカ姿の男達3人。修学旅行の行く先々で起こる事件。
 まあ題名から想像はできますが,本格推理小説ではなく,鶴子と青年新聞記者の冒険譚。謎は誰と誰がロマンの主人公なのかという事で,それはなかなかよくできていたと思います。
 その他の6編の短編は,一世を風靡するエノケンの誘拐事件,ところがさらわれた自動車からこつ然と犯人が消えたという謎,テレビの創成期,生放送しか無い時代に放送が終わったとたんに人気落語家がスタジオからこつ然と消えた不思議,などなど,不思議で魅力的な謎の事件が描かれます。
 ミステリーファンにはこの6編の方が面白いかもしれません。いずれにしろ,本格推理小説として読むより,昭和10年頃の風俗をミステリータッチで描いた作品として読んだ方が楽しめるでしょう。

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2016/12/20

東側篤哉の「学ばない探偵たちの学園」

Gakuen

 先日は短編集「探偵部への挑戦状」を紹介した<東側篤哉の鯉ヶ窪学園探偵部シリーズの長編,「学ばない探偵たちの学園」を紹介しましょう。
 このブログではすでに長編第二作「殺意は必ず三度ある」を紹介しています。今回の作品は鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ初めての作品です。
 探偵部の3年生,多摩川部長と八橋に騙されて入部した2年生,赤坂通クン。赤坂クンの語りで話が進みます。
 芸能部のある鯉ヶ窪学園に潜入した盗撮カメラマンが窓のある密室で殺害されているのが発見されました。窓があってもその外は雨降り後の柔らかい土で,足跡は一切ありません。さらに意味ありげに「振り子・・・」とつぶやいた音楽教師が自宅で死んでいるのが見つかります。自殺とも殺人ともとれますが,殺人だとしたらこちらも密室殺人です。
 殺人はもう一つありますが,謎があるのは前述の2件です。
 この不可能犯罪に探偵部はいかなる回答をだすのか? と言っても,結局事件を解決するのは探偵部顧問の生物教師石崎という事になります。
 密室のトリックは現実的にはどう?というものですが,私としてはこのような推理小説が大好きです。

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2016/12/17

読書好き100人に聞いた,おすすめの東野圭吾ランキング

Tokio

 ネット上に「読書好き100人に聞いた!おすすめの東野圭吾ランキング」という記事がありました
 1位が「ナミヤ雑貨店の奇蹟」,2位は「容疑者Xの献身」,3位は「手紙」,票数は夫々13票,12票,8票。
 100人に聞いて3位以下の票数は一桁です。票が1作品に集まらず,ばらけているという事ですね。どれもこれもベスト級の作品だという証拠で,まあ東野作品ならそうなるのも分かります。
 残念ながら1位の作品は読んでいません。わたしはこのランキング10位以内には顔を出していない「時生」をあげておきましょう。かつてNHKで,父親役がTOKIOの国分太一,その息子役,時生に嵐の櫻井翔というキャストで連続ドラマ化された事があります。年格好から言って信じられないかもしれませんが,このキャストで実の父親と息子をやったのです。それが不自然でないシチュエーション。「時生」とはそんな作品です。

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2016/12/16

東川篤哉の短編集「探偵部への挑戦状」

Tanteibu

 最近書店を覗くと,東川篤哉の「探偵部への挑戦状」という本が平積みしてあります。探偵部シリーズの最新作かと思い手にとってみると,なんだか読んだ覚えのある題名が並んでいる。
 この11月の新刊である文庫本,以前単行本で出た本の文庫化という事の様です。それならば,このブログで紹介していたかなと思って調べたら,紹介していない様ですね。
 この作品,東京郊外の鯉ヶ窪学園探偵部副部長,霧ヶ峰涼クンのシリーズです。
 収録されている短編が全7作。体育祭,学園祭,卒業式(霧ヶ峰涼は2年生だからまだ卒業しないが),それらのお決まりの学校行事で起こるちょいと不思議な事件。それを解くのが霧ヶ峰涼・・・といいたいところですが,実際は探偵部顧問の先生やUFO好きの地学女性教師など,他の人達です。霧ヶ峰涼は語り手です。語り手は決して事件を解決しないというのが,シャーロック・ホームズ以来のお決まりですからね。
 殺人事件の様な重大事件は起こりません。渡り廊下で何かに殴られて倒れていた陸上部部長。そこに至る校庭の足跡は発見者の3人だけ,渡り廊下の両側の校舎への扉は施錠されていたという不可能犯罪。被害者と犯人は何処から来て何処へ去ったのか? 霧ヶ峰が目撃した瓢箪池畔の事件。生徒が鈍器で殴られたように見えたのに,傷は切り傷。いったいどんな凶器? 探偵部のライバル,ミステリー研究会の大金うるるから突きつけられた探偵部への密室殺人事件を解けという挑戦状,などなど。
 どれも短い短編にふさわしい軽い事件。でも謎があり解決がある。
 これだから東川篤哉はやめられない。
 このシリーズの短編集は,「放課後はミステリーとともに」というのが,今回の「探偵部への挑戦状」の前にあります。この前作も今回の短編集もKindle化されており,私はKindle版で読みました。

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