2019/01/21

買った本の95%は読み切れていない!

Book 「買った本の95%は読み切れていない!」という記事がありました。曰く,「購入された書籍全体の95%は、読了されていない」「購入された書籍全体の70%は、一度も開かれることがない」。
 これは最近の傾向なのか,それとも以前からこれらの数字は変わらないのか,むしろそっちに興味があります。私が思うに,多分以前からそれほどかわっていないのではないかとおもいます。
 「マンガなら読むけど、文字がたくさんある本はちょっと……」とも書いてありますが,わたしはむしろ漫画を読む方が文字の本を読むより面倒くさい。ぱっと見の情報量は漫画の方が多くて,読むのに苦労すると思うんですけれどね。
 ところで,うちのカミさんは,始めの部分を読んであまりにも面白い推理小説は,中を飛ばして最後を読みます。他にも,終わりを読んで安心してから読んでいくという女性の方を知っています。一世を風靡した朝ドラ「おしん」は,まずドラマのはじめにスーパー経営者として成功した晩年の姿を音羽信子の姿で見せておいて,小林綾子の苦しかった少女時代につなげるという演出を行い,視聴者を安心させておいてその後に厳しい物語が続くというドラマになっていました。これなども,先ず安心したいという女性の多い視聴者意識の表われで,結構そういう方は多いのではないでしょうか。

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2019/01/16

三津田信三「凶鳥の如き忌むもの」,刀城言耶シリーズ第2作

Magatori

 刀城言耶シリーズの第2長編である「凶鳥の如き忌むもの」。時は昭和30年頃,楫取(かじとり)郡潮鳥(しおとり)町にある兜離の浦(とりのうら)という集落。取材のためにそこを訪れた刀城言耶は,郷土史家の町長から話を聞いているうちに,18年ぶりに近々行われる鵺敷神社に伝わる秘儀「鳥人の儀」に立会って欲しいという依頼を受ける。
 これは,兜離の浦の沖合いに浮かぶ絶海の孤島,鳥坏島の鵺敷神社に伝わる儀式です。18年前,当時の巫女である朱名によって儀式が執り行われたとき,逃げ場がないはずの断崖絶壁の拝殿から,朱名と6人の立会人が忽然と消えてしまい,朱名の6歳の娘,朱音のみが道具倉庫に監禁された状態で見つかるという事件が起きました。
 そんなことが過去にあったため,何かと周囲の人々が心穏やかでない状況下で行なわれた今回の鳥人の儀,巫女として成長した朱音と刀城言耶を含めて7人の立会人が鳥坏島に渡ります。
 そこで起こった消失事件。朱音,さらに3名の立会人が姿を消してしまいました。
 鳥人の儀とは何なのか,18年前の,さらに今回の消失事件の謎は?
 最初から鳥に彩られたミステリー,文中早くから出てくるチベットという言葉,そうなってくると,多分「アレ」ではないかと思うわけですが,やはり「アレ」でした。
 この作品,先日紹介した第三作「首無の如き祟るもの」の複雑さはなく,第一作「厭魅の如き憑くもの」の驚きもないという作品になってしまいました。ちょっと残念。
 Kindleも持っているものの,以前このブログで紹介したいくつかの利点がある為に,電子書籍をKOBO端末で読みました。これまで,刀城言耶シリーズ第一作,第三作,第二作と読んできましたが,楽天KOBOから,「次は山魔の如き嗤うものをお読みください。」というメールが届きました。実際のところ、メールが来るまでもなく,すでに第四作「山魔の如き嗤うもの」はKOBOで購入済みです。

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2019/01/10

三津田信三「首無の如き祟るもの」

Kubinasi 刀城言耶シリーズ第三作,「首無の如き祟るもの」の舞台は首なしの伝説が生きている姫首村。姫首山の北,東,南に広がる村が舞台です。ここで支配的な地位を得ているのが秘守家という一族。先代の長男が当主である一守家,長女が当主である二守家,次女が当主である三守家の三家が,次の秘守家当主の座をめぐって抗争している状態です。
 初めの事件は,秘守家の子供が13歳のときに行われる十三夜参りという儀式のときに起こります。時は第二次世界大戦の最中の昭和18年。一守家の長男,長寿郎と双子の長女,妃女子が,一人づつ順番に媛首山にある媛神堂に参る行事で,井戸で水を浴び禊をして,婚舎と呼ばれる建物を経て媛神堂へ行くのですが,先に山に入った長寿郎が婚舎で妃女子を待っていても妃女子がやってこない。そこで戻ってみると,井戸の中で2本の脚が井戸水から突き出ているのを発見します。
 実はこのとき,長寿郎をつけて山に入っていた幾多斧高という6歳の少年がいました。身寄りがなく一守家にもらわれてきた一守家最年少の使用人です。斧高は,いつも「よき坊」と呼んでやさしくしてくれる長寿郎の事が心配で,こっそりつけてきたのです。長寿郎は井戸のところまで戻ってきて斧高と出合い,二人で井戸の中の足を発見したのでした。
 もう一人,この行事を心配していた人が居ました。村の駐在である高屋敷巡査です。高屋敷巡査は独断で,3ヶ所ある山の登り口に警察官をつけて,山に不審者が入るのを防いでいました。
 この作品は,斧高少年と高屋敷巡査の視点で交互に語られていきます。
 さてこの井戸の二本足の死体について,一守家は警察に届けることなく,妃女子として早々に火葬を済ませてしまいました。
 それから10年後,長寿郎が23才,斧高が16歳の秋,長寿郎の二十三夜参りが終わり,嫁選びの儀式,婚舎の集いが行われます。秘守一族から選ばれた三人の花嫁候補が三つの婚舎に入った後,三人の中の一人,毬子と思われる首無し全裸死体がその婚舎の中で発見されました。一方,長寿郎は各婚舎に一度は回ってきたらしいのですが,どこにも居らず失踪した状態でした。しかしその後,参道の途中の馬頭観音の祠の中で,長寿郎と思われる首無し全裸死体が発見されます。
 秘守一族の跡継ぎであった長寿蝋が死んだ事から,秘守一族を一守家に集めて,後継ぎ問題の話合いが行われます。その場で,斧高自身さえ知らなかった事実が一守家当主から発表され,長寿郎亡き後,一守家,さらに秘守一族の次期当主は斧高にきまります。斧高は,一守家当主が家庭教師の女性に産ませた子供だったのです。その事実を初めて知って,斧高は失神してしまいます。
 その後,話合いにも出席していなかった二守家の次男,身持ちのよくない紘弐と思われる首無し全裸死体が媛神堂で発見され,しかも祭壇上には発見されていなかった長寿郎の頭部が置かれていました。紘弐の首は林の中に捨ててありました。
 まあこんな調子で語っていったら,冊子になるくらいの長い話になってしまいます。話が複雑で,謎を語ろうとするだけでもいろいろなことを説明しなければならず,非常に紹介しづらい作品です。読み終わっても,よくよく読み込んでいないと誰が誰だか訳が分からず,私は2度読みしました。
 刀城言耶シリーズとはいえ,最後に謎解きをしたのが刀城言耶だったのかどうかも定かでなく,大変難物です。
 この作品,刀城言耶シリーズの最高傑作という誉れ高いのですが,私としては前作(刀城言耶シリーズ第一作),「厭魅の如き憑くもの」の方がすっきりしていて好きですね。そちらの方が,トリックも分かり易く納得できます。

 しかし,被害者が首を切られていること,全裸であることは単に猟奇を狙ったわけではなく,しっかり必然性があって,しかもその理由が想像の右上をいくものであったのには感心しました。

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2018/12/27

三津田信三の「厭魅の如き憑くもの」(ちょっとネタバレ)

Maji

 三津田信三の「厭魅の如き憑くもの」を読みました。
 因習に満ちた山深い神々櫛(かがぐし)村。村のあちこちに蓑と傘を着けたカカシ様と呼ばれる案山子が祭られ,信仰を集めさらに怖れられていました。その村ではかつて,子どもの神隠し事件がいくつも起こっていました。
 その村は昔から,谺呀治(かがち)家と神櫛(かみぐし)家という2家が対立しています。この二家のうち,谺呀治家は祈祷と憑きもの落としを生業とし,憑きもの筋として村に君臨していました。しかし,二家の現在の当主である老婆同士の因縁の対立にもかかわらず,若い者はロミオとジュリエットのごとく家を超えて好意を持つ・・・。
 神々櫛家の三男,漣三郎と谺呀治家の双子の妹,嵯霧がそんな関係。漣三郎は6歳の時,9歳だった長兄の聯太郎と谺呀治家の裏山,九供山へ冒険に行き,兄が行方不明になったという事件を経験しています。九供山は村の災いの源と見なされている山で,ナガボウズという化け物が棲むとされています。一方の嵯霧は,谺呀治家の女児が巫女や憑座になる儀式,9歳になると行われる九供儀礼で,宇迦之魂(うかのみたま)という薬酒を飲んだ姉の体調が急変,その葬儀が性急に行われたという経験を持っています。
 そんな村へ取材にやってきた怪奇幻想作家である刀城言耶(とうじょうげんや),ちょっと頼りなさげに見える名探偵の登場です。
 その神々櫛村で,というか谺呀治家で起こる連続殺人事件。4つの殺人事件では,被害者はそれぞれ,櫛,竹の皮,傘などを口にくわえさせられ,カカシ様の蓑と傘をかぶって死んでいました。そしてそれらは不可能犯罪。様々な状況により,誰にしろ犯行が不可能と思われる殺人事件でした。
 この作品は,長編の中でも長い方だと思いますが,中盤まで村や登場人物の説明,登場人物たちが経験した怪異の説明に費やし,そのあと矢継ぎ早の連続殺人事件,そしてラスト,少なくとも4つの解決が刀城言耶によって語られ,最後についに刀城言耶が真犯人を指摘する。そこまでは見事な本格推理小説なのですが・・・,最後の最後,刀城言耶は指摘した真犯人が連続殺人事件の一つにアリバイを持っていることに思い至り,読者の背筋を寒からしめて終わるということになります。
 この手のエンディングを持った長編推理小説として,ディクソン・カーの傑作「火刑法廷」や高木彬光の「大東京四谷怪談」などがありますが,「厭魅の如き憑くもの」はその伝統に則った傑作といえるでしょう。(ここら辺,ちょっとネタバレなのですが,作者自身が「最後まで読まなければホラーなのかミステリなのかわからない小説は書けないだろうか。」という言葉で公表していますから,まあいいでしょう。
 私は電子書籍端末でこの作品を読みましたが,いくつもの図版や家系図のページに全てインデックスをつけ,それらを参照しながら読みました。そんな読み方をするには,電子書籍は最適です。そして,そんな読み方をしなければならないことを覚悟の上,じっくりこの作品をお楽しみください。
 三津田信三の刀城言耶シリーズは,この作品が第一作ですが,既に全て読んでいる娘によると, 3作目の「首無しの如き祟るもの」がシリーズ最高傑作だということです。次はそれを読むかな・・・。娘も自分の電子書籍で読んでいるのですが,紙の本のように家族の間で自在に貸し借りできないところが,読者にとっては難ですねwww。

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2018/11/09

柄刀 一の「月食館の朝と夜」

Tsukato_gessyoku

 柄刀 一の「月食館の朝と夜」を読みました。奇蹟審問官アーサーシリーズの4冊目の本です。長編作品としては3作目となります。
 ローマ法王庁から派遣され,申告された奇跡を調査して世界中を飛び回る奇跡審問官,アーサー・クレメンスを主人公とする本格推理小説です。
 放浪の陶芸家として世界的に有名な五十幡萬生。萬生は既に亡くなってますが,その長男,昭が住む萬生の屋敷をアーサーが訪れます。霧で有名な竹田城にも近い場所にある屋敷です。そこにはアーサーの日本人の異母弟,高校生の甲斐・クレメンスとガールフレンド,五十畑由比とその父で当主昭の弟である五十幡宗正も滞在していて,アーサーにとっては甲斐と久しぶりの休日を過ごす為の訪問でした。
 その夜は皆既月食の夜。月食マニアの昭が,館の別棟というべき月宮殿の塔の最上階に籠もって月食を観測したはずの次の朝,昭が死体で発見されます。顔などを焼かれ,左腕も手首から上の肩まで,布を巻き付けて火をつけられたらしくもえている。手首から先も異様に黒くなっています。だから殺人に間違いはありません。しかし死体の発見は作品の半ば。遅すぎる・・・・・。
 さらに,五十幡邸に滞在していた遠國という光学器械をこの屋敷に納めた業者の男も刺殺されているのが発見されます。この男は生前,この館には隠し部屋・隠し財産があるかもしれないと言ってました。そこに萬生の遺作が眠っていると言っていた人物でした。
 月宮殿へのアクセスは,暗証番号付きのエレベータとテラスからの外階段だけ。犯人は? そして殺害の目的は? 死体が損壊されていたのは何故?
 照明のスイッチに関する細かい考察や館の構造,そして皆既月食の観測時には、館の全ての照明を落とすという習慣。この作者の推理小説は,分かり易い大トリックを使うというより,小さな考察がたくさん必要な推理小説です。優れた本格推理小説でありながら,この作者が今ひとつ大受けしないのも,そこら辺のトリックの分かり難さ,小粒感,というより細かく難解なトリックが影響しているのだろうと思います。本格好きを唸らせる一方,大受けしないという作品です。
 読者の書評では,分かり難さを云々されている方が見受けられました。トリックの肝の一つである月宮殿の外階段のレイアウトなど,月宮殿自体の図版が欲しかったと思いました。
 これまでの作品では名前だけが登場していたアーサーの弟,甲斐・クレメンスが本格的に登場し,アーサーのワトソン役を勤めている事は,好ましい雰囲気でした。

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2018/07/10

週刊少年ジャンプは創刊50年

Giga 週刊少年ジャンプが,7月11日で創刊50周年になるそうです。
 現在の発行部数は漫画誌トップの176万部だそうですが,一時は600万部に達していたと思います。
 聖闘士星矢,ジョジョの奇妙な冒険,北斗の拳,ドラゴンボール,魁!男塾!!,ハイスクール!奇面組,キャプテン翼,こちら葛飾区亀有公園前派出所,キン肉マン,などなど・・・。漫画史にのこる名作ぞろいですね。
 私が最近読んでいるのは,週刊ジャンプ掲載の麻生周一先生の「斉木楠雄のΨ難」ですが,既に本編は完結していて,現在続編が掲載されているのは季刊のジャンプGIGAなんですよね。

(写真はアマゾン書店のホームページより。)

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2018/05/31

乾くるみの「物件探偵」

Bukken_tantei

 乾くるみの短編集,「物件探偵」は,登場人物がマンションやアパートを借りたり買ったりするところから始まります。その物件に関して何らかの事件が起り,不動尊子が登場し,不動尊子が解決する。不動尊子は以前不動産会社に勤め宅地建物取引主任者の資格を持っている女性で,物件の気持ちが分かる様になったと言っている人です。
 幽霊物件の事件はあるだろうと思っていましたが,この短編集の最終編がそれでした。池袋にある7階と8階の2フロアを使ったメゾネットタイプのマンションの部屋。そこでは前の住人が自殺した部屋でした。それを気にしない男性がこの部屋を買いましたが,鍵がかかって他人が入れるはずのない部屋で肉が腐った様な匂いがしたり,前の住人が首つりしたであろう階段の手すりに縄目模様が浮き出ていたという怪異がありました。そこに不動尊子が現れ,この部屋と男性の相性は抜群にいいと話し,事件の謎を解いていく。
 こんな具合に展開する短編集です。不動産がらみの事件を解決する話で,殺人や強盗事件などではなく,緩い括りで言って詐欺事件を主体とした話が展開する短編集です。

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2018/05/30

乾くるみ「塔の断章」

Touno

 乾くるみの長編,「塔の断章」を読みました。
 この作品は,塔の序章,塔の断章,塔の終章の三章から構成されています。
 「塔の序章」では,どこかのバルコニーにおける男女の会話が描かれます。どうも妊娠について話しているらしい。女性が男性をなじっているようです。いわく,避妊していたつもりが妊娠してしまったという事らしい。
 この章の最後には,男性が女性を抱え上げ,手すりを超えて女性を投げ落としてしまいます。
 そして次の「塔の断章」。この小説の展開部。辰巳まるみのファンタジー小説,「機械の森」に基づいて,ゲームを作るプロジェクトが進行し,そのプロジェクトのメンバーがとある別荘に集まる。8人が集まり一夜経った朝,地上に叩き付けられて死亡している若い女性が発見されます。この別荘の持ち主,ゲームを製作している出版社のオーナーの令嬢で,ゲームの美術デザインを担当していた女性です。女性は妊娠していました。別荘の特徴である塔のベランダから落下したと思われます。
 この事件はやがて社会的には自殺として処理されますが,女性の兄はプロジェクトメンバーであった天童と辰巳に,誰が妹を妊娠させたか,調査する事を依頼します。
 それから,*で区切られた短いシークエンスが続いていきます。しかもそれは時系列的にバラバラに示されます。読み難いという方もいる様ですが,私は結構各シークエンスの後先が判断できて,読み難いという事はありませんでした。
 そうこうしているうちに,私は,あの「塔の序章」の投げ落とされた女性が,「塔の断章」の社長令嬢なのかどうか疑いだしました。なにしろ乾くるみ作品ですからね。
 さらに,「塔の断章」の時系列を無視した記述,それは全て一人称で語られるのですが,私はとりあえず辰巳まるみの一人称だと考えて読み進んでいました。「塔の断章」の最初のシークエンスでは,疑いなく辰巳まるみの語りでしたから。しかしそのうち,果たしてその一人称が1人の人物なのかどうか,うたがいだしました。なにしろ乾くるみなのですからね。
 そして最後の「塔の終章」,ここで真相が明らかにされます。前述の「乾くるみだから」という事こそこの作品のトリックだったといっていいでしょう。読んでいる途中の「乾くるみだから」という疑心暗鬼は,あっていた部分もあり,違っていた部分もあり,「塔の断章」が時系列的にバラバラな短いシークエンスで出来ていた事の意味が分かり,全体的にいえば「乾くるみ作品としては結構率直な作品だったんだ」という感想を持ちました。
 「謎」興味は薄いけれど,サプライズエンディングがまっている乾くるみは,だからやめられない。

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2018/05/27

麻耶雄嵩の「友達以上探偵未満」

Maya_tomodachi

 このところこのブログも読書づいていますが,麻耶雄嵩の「友達以上探偵未満」を読みました。2018年3月に出版された本で,過去作品を読む事が多い私としては珍しい新刊書の紹介です。
 「伊賀の里殺人事件」「夢うつつ殺人事件」「夏の合宿殺人事件」の3作品を収録した中編集と行っていいでしょう。このうち。前2作には「読者への挑戦状」が挿入されています。
 探偵になる事をを夢見る女子高生,伊賀ももと上野あおの桃青コンビが探偵役,ももの兄の空が刑事で,何かと二人の捜査に便宜を図ってくれますし,事件解決の実績のある二人に,警察全体が便宜を図ってくれている様です。
 「伊賀の里殺人事件」は,NHKで2014年に放送された「謎解きLIVE」の問題として書かれた「忍びの里殺人事件」を元にしている。この番組は,視聴者参加型のミステリードラマで,視聴者とスタジオのゲストが,犯人当てを行う形式の番組でした。したがって,当然その問題として書かれた作品は,読者への朝鮮状が挿入されてもおかしくない作品なのです。
 ももとあおの地元は伊賀忍者と松尾芭蕉のふるさと,伊賀市。その伊賀市で行われた市主宰のイベント,「伊賀の里ミステリーツアー」。色違いの忍者装束姿で参加者がポイントを回って芭蕉に関する問題を解いていくイベントで,殺人事件が起りこれを解決する話。殺人は俳聖殿というツアー会場内建物の中とホテル内の二度行われますが,筋立てが細かく,一口で紹介する事は出来ません。そこら辺,いかにも推理ドラマの問題編です。
 「夢うつつ殺人事件」は,桃青コンビが通う高校で起った殺人事件。事前にある男子生徒を殺害する相談を,うとうとしながら影で聞いていた女子生徒がいました。その女子生徒がも桃青コンビに相談しましたが,しばらくしてその男子生徒が実際に殺害されてしまいます。
 「ゆめうつつ」というタイトルが効いている作品でした。
 麻耶雄嵩にしてはまともな本格推理小説だと思っていたら,最終作「夏の合宿殺人事件」でももとあおの内面が描かれます。
 事件そのものは,前2作より前に起ったものです。まず老婆からの現金ひったくり事件の犯人をあおが見事に解決し,ももの兄,刑事の空も一目置く様になるという事件が描かれます。
 そして本題という事で,ももとあおが当時所属していた文芸部とバレー部が夏休みの合宿で訪れた高原の合宿書で女子生徒の殺人事件が起り,空が捜査上の便宜を図りつつ,二人がそれを解決していきます。
 どちらかというと,前2作でももの心情が分かる様に描かれ,論理的なあおの心情は分かり難い感じでしたが,「I 伊賀もも」「II 上野あお」と章立てされ,ももの視点とあおの視点で二人の心情が描かれます。
 初めあおはももを探偵助手ワトソンとして扱おうとしますが,やがてももはワトソンではなく探偵の片割れ,つまりももとあおの二人でひとりの探偵だと気づきます。 それで「友達以上探偵未満」という本のタイトルの意味も理解できました。二人でひとりの探偵。探偵の能力はあおの方が上という気がしましたが,読者への挑戦状の前に「分かった」というのはももであり,それを元にしてももの推理を否定する事であおの推理が始まるわけで,ももがいてこそのあおの推理が完成するという構造が明らかになり,あおはそれを認識する様になります。
 このシリーズ,まだまだ続けられるとおもいます。続く事を願っています。

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2018/05/26

乾くるみの「クラリネット症候群」

Clarinet

乾くるみの「クラリネット症候群」を読みました。「マリオネット症候群」と「クラリネット症候群」の2作品(中編)が入っている作品集です。
 いまでは徳間文庫から出版されていますが,そもそも徳間デュアル文庫というライトノベル系レーベルで刊行された本で,主人公はいずれも高校生です。
 マリオネット症候群は,人を殺したら被害者の精神が加害者の肉体に入ってしまい,加害者の風体のまま行動は被害者が操るものとなり,一方加害者の意識も消えないで残っているが,体は操れなくなるという状況。いくつかの殺人事件が連続して起こり,次々に加害者の肉体が被害者に乗っ取られて,そこから起るミステリー的ドタバタが描かれていきます。不思議な事を考えましたね,乾さん。
 主人公少女の母親の正体(精神として中に入っていた人)や主人公自身の正体などのサプライズもあって面白く読む事ができますが,推理小説の謎的興味はあまり感じられません。もちろん本格推理小説的なところはほとんど無い作品ですwww。
 クラリネット症候群は,あるきっかけからクラリネットをいじめっ子に壊されてしまった高校生の主人公少年が,他人の発する言葉のうち「ドレミファソラシド」の音のみが聞こえなくなるという現象が起ります。主人公少年は父の名も知らず,母は失踪,親切なクラリネットの持ち主の家に同居して暮らしていました。しかもクラリネットの持ち主は少年を正式に養子にしてくれていた事も分かります。
 そんな主人公が,クラリネットの持ち主の誘拐事件に遭遇し,思いを寄せる先輩少女やヤクザが関連する事件に巻き込まれる・・・。
 この作品は,結局暗号解読小説で,マリオネット症候群よりもこの作品の方が私としては面白かったです。謎的興味はマリオネットと同じ様にありませんが,この先どうなるのかという予想がつかない展開感が強いのです。主人公が思いを寄せる先輩少女の言葉が,クラリネット症候群によって高校生少年にとってドキリとする様な言葉になってしまい勘違いしてしまうところも,本筋とは関係ありませんがよくできていました。またクラリネット症候群は,暗号解読の際にも役に立ちます。
 最後は多少御都合主義的なあっと驚く父親も見つかり,子どもがいない実父の妻からは落ち着いたらウチの子になってほしいと言われ,派手は爆発シーンがある割には誰も死亡する事もなく,一応めでたしめでたしで終わります。主人公のクラリネット症候群はあるきっかけから結局1日で直ってしまい,逆にクラリネットを壊したいじめっ子の方がドレミファソラシドが発音できなくなってしまっていた事が分かります。因果応報という事ですね。

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