現代の書店の役割は?
中学生の娘が,学校の関係で,アンデルセンの「即興詩人」が欲しいというので,それなら,かなり昔,岩波文庫で読んだ記憶があると言ったら,書店に行って探したそうです。ところが,絶版になっているということで,注文できませんでした。それなら,古書店しかないわけで,インターネット上の古書店サイトで検索しました。同じ岩波文庫の森鴎外訳「即興詩人」なのに,古書店によって500円から2000円まで,値段もまちまちです。娘は700円くらいのものを注文したようです。
最近,このように,インターネットで本を注文することが多くなりました。新刊であれ古書であれ,欲しい本が決まっているとき,書店でなくインターネットで注文することが多くなったんです。インターネットで注文すると,配達料がかかりますが,バスで本屋へ往復することを考えたら,かえって割安です。
そんな時代の書店の役割は何でしょうか? 私は,本のショーウィンドだと思います。欲しい本が決まっていれば,インターネットで注文できます。でも,「何か面白そうな本はないかな?」というときは,書店へ行きます。ぶらりぶらりと書店の棚をまわるのも,楽しいものです。最近は,大きな書店では,感想を書いたカードなどが掲げられ,ちょっとした書評つきで本を選ぶことができます。書店の本の40%は,出版社に返本されるそうです。書店に並んでいる本の40%は,販売されないのです。そんなところも,ショーウィンドであることを示しているように感じます。
かつて,書店は読みたい本を置いていないという事が言われていました。現在,読みたい本の題名がわかっているのならば,かなりマイナーな本でも,インターネットで手に入ります。また,ジャンルなどから絞り込んで,面白そうな本を選ぶこともできます。そんな時代では,書店は,マイナーな本を置く必要がなくなったのではないかと思います。
インターネット書店が繁盛する時代では,書店が衰退していくという意見があります。確かに,書店がショーウィンド化するという事は,書店で本が売れなくなるという事であり,インターネット書店に置き換わりつつあるといえるでしょう。しかしショーウィンドとしての書店は無くならない。しかし,書店だけでは成り立たないでしょうね。なにしろショーウィンドなんですから。ネット書店がネットでの購入を促す為に,ショーウィンドとしての書店を開くのです。紙に印刷したような,見やすいディスプレイによる電子書籍に,本が取って代わられる可能性も否定できないですが,そんな電子書籍にも,紙の本のショーウィンドというのは必要だと思います。
ところで,娘が注文した森鴎外訳「即興詩人」はまだ到着しませんが,本人は,ひょっとして旧仮名遣いなのではないかと心配しています。
---<追伸>----------------------------------
娘が注文した即興詩人,届いてみたら,見事に旧仮名遣いでした。
| 固定リンク
コメント