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2004/07/19

東野圭吾著「トキオ」読了

 東野圭吾の「トキオ」は,結構厚い本(414頁)ですが,たちまちのうちに(といっても半日かかりましたが),読了してしまいました。「トキオ」といっても,ジャニーズの「TOKIO」でも,沢田研二の「TOKIO」のことでもありません。しかし,この2つの「TOKIO」は,この作品に微妙に関係しています。
 2000年~2002年に雑誌に連載され,2002年に単行本で出版された作品を,何故今頃読もうと思ったかというと,あるTV雑誌で,この作品がいまNHKでドラマ化されつつあり,この8月30日から一ヶ月にわたって放送されるという記事を見たからです。
 「現代(2004年)からタイムスリップして,25年前の若い頃の父と出合った息子が,ダメ男だった父を更正させるファンタジー」という紹介のされ方をしていましたが,タイムスリップ物に目がない私としては,是非読んでみたいと思いました。東野圭吾なら,内容の方も保証付です。
 読んでみると,ファンタジーというにはもう少しハードな内容で,推理作家東野圭吾らしく,23歳の父と17歳の息子(その名前が時生,つまりトキオです)が,ある組織に追われて失踪した父の恋人を助ける犯罪がらみのストーリーです。そんなストーリーに,父とその生みの親の確執と和解の物語がからみます。
 この若い頃の父は,何をやっても長続きせず,それほど強くないのに喧嘩っ早いダメ父で,しっかり者の息子にリードされながらこの事件に当たります。ダメ父は,登場人物の一人から,「あの子(トキオ)のほうが,よっぽど大人やわ(関西弁です)」と言われ,トキオも登場人物の一人に,「あの人(将来の父)の若気の至りを見るのはつらい」と打ち明ける程です。(そんな父から,なんでしっかり者の息子が生まれたかというと・・・,ダメ父の若い頃,つまりこの物語で描かれた時代,タイムスリップしてきたこの息子との出会いと,この本に描かれている体験によって,すっかり人生観が変わったからです。ダメ父は,この息子が生まれる頃には裕福な社会人になっており,そんな立派な父と母の愛情を一身に受けて育った息子は,なかなかよくできた息子に成長するのです)
 ミステリーとしてみると,失踪事件の真相があっけなく,東野圭吾にしてはひねりが無いように思われます。タイムスリップというシチュエーションと,父と生みの母との和解,若い頃のダメ父の更正の物語がよくできているだけに,ミステリーの部分が弱いのがちょっと残念です。
 将来の父に,「短い期間だったけど俺は幸せだった。この世界で会う前からそう思っていた。生まれてきてよかったと思っている」といい,最後のほうにチラッと出てくる将来の母を助けて去っていく息子。そして,ラストシーンは現代の息子と父母のシーンで締めくくられますが,涙なくしては読めません。
 この作品のTVドラマ化では,主人公のダメ父をTOKIOの国分太一(50歳代の現代のシーンも,特殊メークで演じているとか),よくできた息子,トキオを嵐の櫻井翔が演じます。息子役のほうは,櫻井翔を思い浮かべながら読んでも違和感ありませんでした。父親役の国分太一は,ダメな男をやらせると絶品だったりするのですが,この作品のダメ父とは「ダメ具合」が違うように思われ,TOKIOなら,長瀬智也か松岡昌宏の方がぴったりくるように思います。NHKとしては,同局のTVドラマ「海猿」とその続編「海猿2」で好演した国分の実績を買ったというところでしょうか。どんな作品に仕上がっているのか,楽しみです。
 ということで,冒頭に「微妙に関係している」といった,この小説とジャニーズの「TOKIO」との関係は以上のとおりです。じゃあ,沢田研二の「TOKIO」との関係は? この小説の一節に,次のようなフレーズがあるのです。
--(引用)-------------------
 麗子の視線が斜め上に向けられた。そこにはテレビが置いてあった。画面に映っているのは,歌手の沢田研二だった。
 「ジュリーだ。すごく変わった歌ね。新曲みたい」
 拓実は画面下に表示された文字を見て,小さくあっと声を漏らした。曲のタイトルは,『TOKIO』となっていた。
---------------------------
 ここで,麗子というのが,トキオの将来の母,拓実は,将来の父の名です。

トキオ
tokio.jpg

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