「古代史の秘密を握る人たち」読了
11月19日の記事で,関裕二著「継体天皇の謎-古代史最大の秘密を握る大王の正体」という本を紹介しましたが,同じ著者の「古代史の秘密を握る人たち-封印された「歴史の闇」に迫る」という本を読みました。
この本は,前に紹介した継体天皇や聖徳太子,卑弥呼,神功皇后など,謎のある歴史上の人物にスポットを当てて,その正体,これまでの定説とは違った著者の考えをを述べた本で,歴史上のミステリーを解くという面白さがあります。
この本の中で,なるほどと思った点がふたつ。
その一つは,天皇の存在についてです。
日本書紀をはじめとして,様々な古代の本の記述から,著者は,古代の天皇制は,絶対権力を持った西欧流の絶対王政ではなく,豪族達の連合政権の象徴のような存在だったと言っています。大和朝廷というのは,合議制の上に成り立っていた政権で,合議で決まった案件を天皇に奏上し,天皇はこれに印(御璽)を押すことで「追認」することしかできなかったこと,しかもその御璽さえ,通常,太政官が保管していて,天皇の自由にはならなかったということです。天皇が権力を持っていなかったことは,全く防衛を考えていないかのような開けっぴろげな宮殿に住んでいたこと事からも伺えると著者はいっています。
これは,全く今の日本の天皇制と変わらないではありませんか。現在の天皇も,国事行為として,法律の公布,首相の任命,国会の召集,衆議院の解散,大臣の任命・罷免,国会議員選挙の公示,外国大使・公使の任免などを行います。これだけ見ていると大変な権力を持っているようですが,全て,「国会か内閣の助言と承認に基づいて」という言葉がつきます。この本に書いてあることが本当なら,今の天皇制も,古代からの日本の伝統にのっとったスタイルだったわけです。
戦後の天皇制について,アメリカ進駐軍GHQは,象徴天皇制という新しいスタイルを創始したと思っているかもしれませんが,むしろ象徴天皇制の方が日本古来の伝統あるスタイルなのであり,明治維新以来絶対天皇制になりかけていた天皇制を,元に戻しただけだったというわけです。
もう一つは,日本の古代は,世界的に見ても「女王」が多かったこと。邪馬台国の卑弥呼やその後継者であるトヨ(台与または壱与),著者がトヨと同一人物だといっている実質的な天皇であった神功皇后,推古天皇,皇極天皇,持統天皇,言明天皇,元正天皇,孝謙天皇,さらに天皇でないが万葉集の額田王,光明皇后など,政局に大きな影響力を振るった女性がたくさんいます。これらの女性は,男性社会が行き詰ると登場し,世の中の混乱を収拾してきたと著者は言うのです。これも現代に通じてませんか? 現代日本も,女性の活躍が目立つ時代です。混乱した世の中を,女性が収拾するというのが日本古来からの伝統らしい。前の選挙の時,「投票する意中の人が居ないのならば,とりあえず投票所に行って,誰でもいいから女性に投票しなさい」と言っていた人がいましたが,なんだかとってもうなずけます。
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古代史の秘密を握る人たち
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コメント
trackbackありがとうございました。
「女性は,男性社会が行き詰ると登場し,世の中の混乱を収拾してきた」に関しては同感です。
投稿: 能見台hiro | 2004/11/28 00:52