「二笑亭綺譚」紹介
昭和の初め,東京深川に「二笑亭」という建物がありました。渡辺金蔵という人が作った建物でしたが,この人は精神分裂病だったといわれ,近所の人が「お化け屋敷」と言っていた奇怪な建築だったといいます。
この建物「二笑亭」とその設計者である渡辺金蔵のことを書いた本が,「二笑亭奇譚」(式場隆三郎 他著,ちくま文庫)です。「二笑亭」は,奥行きが狭くて布団を入れることができない押入れ,屋根から中空へ向けて突き出ている上がれないはしご,黒砂糖と除虫菊を練りこんだ玄関の壁,重量級の材料を集めた建築の屋根がなぜかトタン葺きであったなど,設計者の不思議な発想によって作られていました。この本は,そんな「二笑亭」について,これまで書かれた文章を集め,さらに模型でその建築を再現したものです。
奇怪な建物というのは,なかなか興味ある題材です。昭和初期,この建物もこれを設計した「二笑亭」主人も理解できず,人々は「化け物屋敷」と言っていたわけですが,いまでは「おたく」という言葉でくくってしまえそうです。ふつうの建築と違う部分についても,設計者の頭の中では,おたく的,偏執的に,意味のあることだったようです。設計者は,茶道に興味があったようですが,考えてみれば茶室というのも,おたく的な建物で,千利休がえらく小さい入り口を持つ建物を作ったときも,白い目で見る人々はいなかったのかしらと思ってしまいました。そもそも,○○道というのは,ある意味で皆おたく的です。
この「二笑亭綺譚」という本(ちくま文庫)は,絶版になっており,残念ながら,このBLOGで紹介した他の本のように,アマゾン書店で購入することはできません。古本屋か図書館を利用するしかありません。
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「アマゾン書店で購入することはできません」と書いたのですが,なんとアマゾン書店のホームページに載っている事を発見しました。リンクは次の通り。
アマゾン書店のホームページで検索してヒットしなかったのは,「二笑亭奇譚」で検索していたからだった事がわかりました。「奇譚」でなく「綺譚」だったのです。
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コメント
はじめまして、クロと申します。
先日はトラックバックありがとうございます。
まさか二笑亭に反応があるとは思わなかったので、非常に嬉しいです。
上記の二笑亭奇譚、2年ほど足で探していたのですが全く見つからず、
ネットで古本屋を片っ端からあたりやっと見つけて購入しました。
やはり少し値が張りましたが、手に入れてよかったです。
実際に模型を見たいですね。
投稿: クロ | 2004/12/22 10:52