日本の宗教
ローマ法王が,ドイツ人のベネディクト16世に決まりました。
前法王は他宗教との和解に力を注ぎ,もう少し長生きしていれば,イスラム教とも和解していたろうと言われています。
イスラエルとパレスチナ,イラク国内のイスラム各宗派の対立,北アイルランド紛争など,世の中の多くの紛争が宗教を巡って起きています。心のよりどころを示す宗教で紛争がおきるというのも,皮肉な話です。
キリスト教もイスラム教も,ただ一つの神を信仰する一神教です。そこへいくと,古代ギリシアやローマの宗教は多神教,日本の神道も多神教です。ゼウスやポセイドンは神話の世界になってしまい,もう信仰している人はいませんが,日本の神道は,特に信仰しているという意識がなくても,日本人の中に生きているように感じます。
日本人は信仰心がないとか,無宗教の人が多いと言われます。私も,外国人から宗教を聞かれたときは,「仏教だよ」と答えますが(先祖代々受け継いできた仏壇が,家にあるからというだけの理由なんですが),日本人に聞かれたときは(まず日本人で聞く人はいませんが)「無宗教です」と答えます。実際,とりたてて信仰しているという宗教はありません。父が亡くなったとき,ウチはいったい何宗なのか,親戚中に聞きまくったくらいです。日本人には,そういう人が多いんじゃないかと思います。生まれたときは神社,結婚式はキリスト教,死ぬときはお寺というのが,一般的な日本人だと言われます。宗教に対して節操がないようですが,実際のところ,これらすべてが,素朴な神道が日本人のなかに生きているからだと思っています。山も川も,石や自然のものすべてに神様が宿っているという多神教の神道は,キリスト教の神様だって,仏様だって,多くの神々の中の一つとして受け入れても,なんら宗教的な矛盾はありません。おそらく,昔からそのような意識を持っているために,明治時代,日本人は外国の神様だけでなく,西洋文明なども抵抗なく取り入れることができたのではないかと思います。
対立することなく,いいものは(とかく,自分に都合のいいものはという具合になりがちですが)何でも取り入れる日本。世界中で宗教による対立が起こっているこの世の中で,ある意味で日本は,世界で一番平和に近いのではないでしょうか? 平和憲法の存在よりも,日本人の多神教的な意識が,日本を平和に近づけているのです。
多神教と言えば,宮崎駿監督のアニメ映画「千と千尋の神隠し」は,正に日本の多神教の世界を描いていました。神様達が入りに来る風呂屋を舞台にしていて,主人公の千尋と仲良くなる少年ハクは,昔千尋がその川でおぼれかけたのを助けた川の神様でした。このアニメ,欧米でも人気があり,ついにベルリン国際映画祭の金熊賞や米アカデミー賞の長編アニメ部門の作品賞を受賞してしまったわけですが,この多神教の世界を,一神教の欧米の人が理解できたのだろうかと思います。神様「たち」が入りに来る風呂屋という設定自体,理解できないのではないでしょうか?
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