泡坂妻夫著「大江戸奇術考」を読みました
最近読んだ本で,ちょっと毛色の変わった本を紹介しましょう。
江戸時代の奇術について書いた本です。「大江戸奇術考」という本で,「手妻・からくり・見立ての世界」という副題が付いています。著者は泡坂妻夫。私のようなミステリーファンには,「乱れからくり」や「亜愛一郎の狼狽」や「曽我佳城全集」などの推理小説の作者としておなじみです。直木賞をはじめ,いくつもの文学賞を受賞している推理作家ですが,もう一つ,アマチュアマジシャンとしての顔を持っています(本職として,実は推理作家でもマジシャンでもない顔が別にあるのですが)。
その泡坂妻夫氏が,江戸時代の奇術書で紹介されている奇術の数々,さらに江戸からくりや歌舞伎のからくりまで,奇術研究家として解説しているのが本書です。当時の奇術の種も明かされ,私のような奇術ファン,泡坂妻夫ファンには堪えられない本です。日本の歌舞伎は,西洋の演劇と同じように,文芸,音楽,服装美術を取り込んでいるだけでなく,曲芸やサーカスやからくりや奇術まで取り込んでいたこと,だからこそ明治時代になって松旭斎天一一座が出てくるまで,大掛かりなマジックショーが育たなかったのであり,歌舞伎がマジックショーの代わりになっていたという記述は,なるほどと思いました。
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