強度偽造マンション住民に対する,石原都知事の対応
マンション強度計算偽造事件の被害者に対する救済方法が,自治体によって異なっていることが報道されています。
どの自治体も公営住宅を準備していますが,入居条件がまちまちで,無償提供するところもあれば有償提供するところもあります。また,貸与する期間も,3ヶ月限定とか6ヶ月限定など,まちまちです。
東京都の石原都知事は,責任がはっきりしない現在では,都営住宅を無償提供できないこと,500戸を確保したが有償提供することを明言していて,被害者にとって最も条件が悪いといえます。しかし,救済に税金を使うことを考えれば,これが一番分かりやすい方法です。
今回の事件は天災ではなく人災です。被害者の救済を含めて,それを償うべき人や法人,機関が存在します。しかし,それが確定するにはまだ時間がかかる。被害者の計算偽造マンションからの退去は急を要します。そこで,天災発生時に準じて,有償で公営住宅を提供し,その費用は被害者が,後に確定した責任元に請求するのが筋です。もちろん責任が確定するまでの間の費用は,被害者への低利の貸付などの救済が必要になります。しかし,被害者の移転費用を含めて,最終的に責任元にすべて償わせるという態度は貫く必要があります。 実際のところ,会社の倒産などによって,責任元が償うことができるのかという問題がありますが,現状,それは別問題と考えなければなりません。
急を要するといえば,それほど大きくない地震で倒壊する恐れのある建物の取り壊しも急を要します。川崎市や横浜市は,マンション住民に対して使用禁止命令を出しましたが,建物周辺の住民も生命の危険にさらされています。京浜急行は,大師線川崎大師~東門前間の線路脇に建っている「グランドステージ川崎大師」に対し,震度4以上の地震発生時には,最寄の東門前駅の助役がマンションに赴いて肉眼で状態を確認することを業務取り扱いに追加しました。万が一の場合,一時運転見合わせの後駅構内の安全が確認されてから時速35km以下の徐行で運転再開することになるそうです。このような周辺への影響を解消するために,至急建物の取り壊しが必要です。これも,責任がはっきりしたら責任元に費用を転嫁することを条件に,自治体は早急に対応する必要があります。一部には,責任論議の証拠として,建物を早急に取り壊さないで欲しいといっている自治体もある様ですが,証拠は証拠として早急に調査して,取り壊しを急がねばなりません。
とにかく,至急やらなければならない住民の避難と建物の取り壊し等と,至急にはできない責任元の確定(それぞれどのくらいの割合で責任があるのかを含めて)やその後の被害者の身の振り方の心配等のことを分けて考える必要があります。テレビのニュースショーなどでは,これらを混同して伝えるので,分かりにくくなります。
国は,補正予算を組むことも視野に入れて今回の事件に対応するといっています。今回の事件に対する国の責任は逃れられないと思いますが,被害者への厚い救済措置の約束などによって,国の責任がうやむやにならないよう,国民は注視していく必要があります。
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