間羊太郎著,「ミステリ百科事典」
久しぶりに,本の紹介をします。文春文庫から出ている,間羊太郎著「ミステリ百科事典」です。
この本は,以前新書版で出版されていて,私はそれを持っていました。大きく,「人体」「生物」「風物」「事物」に分け,それぞれをもっと細かく「目」「手」「猫」「犬」「雪」「氷」「電話」「時計」などに分けて,それにちなんだミステリのトリックを解説した本です。
トリックを解説した本を出すというのは,本来とんでもない話で,著者はミステリファンの風上にも置けないということになります。しかし,この本はどちらかというと,「この本に書いてあるミステリはすでに読破している人,もし読んでいない作品のことが書いてあったら,現在では手に入らない本で,この本を読んでもなんら問題ないという人向けに書かれたもの」と考えるべきでしょう。作品を既に読んだ人がいまさらそのトリックの解説などを読んで面白いのかと思うかもしれませんが,著者の語り口の面白さで夢中になって読んでしまいました。この本でのトリックの紹介方法は,作品の一節を引用するという方法ですが,その引用の仕方も絶妙で,「まえがき対談」として宮部みゆき氏と北村薫氏が冒頭で言っているように,原作を読むより面白い場合さえあります(たとえば,小沼丹氏の諸作。長らく手に入らなかった小沼氏の諸作は,この本(いまからはるか昔,高校生の頃買った新書版)でその一節を読んで,その後創元推理文庫に入ったとき期待して読んだのですが,ミステリとしてはそれほどでもなかった)。
既に新書版をもっているのになぜ2005年11月10日発行の文春文庫版を買ったかというと,新書版に対して「ミステリ・ジョッキー」や「妖怪学入門」が追加され,大幅に内容が増加しているからです。
この本は,「この本に書かれているミステリなどは既に読破している人を対象としている」といいましたが,そんな人は既にこの本の存在を知っていると思われ,そんな人向けにこんな紹介を書いても仕方ないような気もします。今日は自己矛盾をはらんだ紹介BLOGでした。
<アマゾン書店へのリンク>
| 固定リンク
コメント