「ユダの福音書を追え」読了
日経ナショナルジオグラフィックス社から出版された「ユダの福音書を追え」という本を読みました。
毎日新聞の書評欄で紹介されていたもので,ハーバート=クロスニーという米国人ジャーナリストが書いたものです。
キリスト教の公式の聖典のひとつである「新約聖書」は,「マタイによる福音書」など四つの福音書から成っていますが,それはたくさんの初期のキリスト教関係文書の中から,正当として選ばれたもなわけで,新約聖書が成立する過程で,たくさんの文書が異端として破棄された結果です。そんな文献のひとつに,「ユダによる福音書」がありました。ユダというのはもちろん,キリスト教徒でない私でさえ知っている,イエスを当時の官憲に売った裏切り者のことです。ユダはもとも13番目の使徒であったわけですから,ユダの立場で書かれた福音書があってもおかしくありません。それがエジプトで発見され,2000年に学者によるそのパピスルの解読が始まりました。しかし発見はその20年前。発見されてから学者による分析が始まるまで,この福音書は数奇な運命をたどっていたのです。
この本は,その数奇な運命を詳述した本です。古文書として,何人もの人たちの金儲けのアイテムとしてたどったこの福音書の変転が書かれています。
実のところ,私は,ユダの福音書の内容の研究結果を記載した本かと思って読んでいったのですが,内容の紹介は最終章の18ページ程で行われているだけでした。実際,内容についてはまだ研究途上で,本にして紹介する段階では無いようです。その点,ちょっと肩透かしを食らったような気がしました。「ダビンチ・コード」のような謎解きを期待すると,「あれれ」ということになります。福音書の変転は,それなりに面白く読めましたが・・・。
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