規制緩和のために起こった事故?
毎日新聞の24日夕刊トップに,「バス業界疲弊」という記事が載っていました。
先日の大阪吹田市で起きたスキーバスの死傷事故に関連して,2000年以来,バス事業者が1400社余り増えた事,しかも,今回事故を起こしたあずみ観光バスのような小規模な事業者が増え,運賃が従来の半額に低下,法規どおりの運転手の確保,休日の設定ができなくなっているという記事です。これは2000年に行われた規制緩和で,バス事業が免許制から許可制になった結果だという事です。記事では,「規制緩和のひずみが凝縮されて」いると言っています。
たしかに最近,規制緩和による競争の激化や値下がりで,安全面,衛生面などがおろそかになった事例が多く見かけられます。しかし,私はこれを規制緩和の「結果」として見るのは時期尚早だと思っています。「結果」が出ているのではなく,今は「過渡期」なのです。
たとえば観光バス事業を例にとれば,最近街で見かけるのは,以前の私鉄系のバスは姿を消し,名前を知らないバス会社の観光バスです。長距離高速バスにしても,JRや私鉄系・既存バス会社系のバスに比べて,インターネットなどで募集しているものはかなり格安です。しかし,消費者も安全と引き換えの安さである事が分かってくれば,いずれ揺り戻しが来て,高くても安全な方を選ぶようになるでしょう。バス会社も,高くても安全である事をアピールするところが出てくるでしょう。安全をないがしろにした会社は淘汰され,価格についても,無駄は排除されているが,安全性を考えたある程度の妥当なものになっていくでしょう。そのときが規制緩和の「結果」が出た時なのだと思います。
2000年の規制緩和から7年。「結果」が出るまで,あと5年はかかるでしょうか。しかしその間に,何度事故が起こればいいのか? 規制緩和の時代には,消費者も賢い選択ができなくてはなりません。あと何度事故が起こればいいのかは,消費者の賢さにかかっていると思うべきです。決して,規制緩和の後戻りではなくて。
パソコン売り場で,5万円のものから40万円のものまで店頭に並んでいる時,安いからといって5万円のパソコンに飛びつく事はありません。安いものと高いものでどこが違うのかを調べ,店員に質問して,それならば10万円の機種にしようという具合に,納得して購入します。
規制緩和以前の時代では,政府が規制によってどの会社のサービスも同質のものにしていました。だから値段はどこも似たり寄ったりだったのです。消費者はどれを選んでもほぼ同質のサービスが受けられたのです。
規制緩和以降は,最低限の規制しかなく,いろいろな値段と質のサービスが出てきました。パソコンを選ぶ時のように,消費者がそれを自分の裁量で選択しなければならないのです。ところが,消費者の意識がまだそこまで規制緩和時代に対応していないのが現状です。今の時代,消費者の意識の改革が必要です。
もっとも,今回のバス事故は,労働時間や休日の扱いなど,最低限の規制さえも守られていなかったわけですが・・・。
| 固定リンク
コメント
悲惨な事故でしたね。外国でも観光バスの事故が起こっています。
投稿: toshiki | 2007/02/26 19:44