高田崇史著「QED 百人一首の呪」
高田崇史著「QED 百人一首の呪」を読了。
このQEDシリーズは,鬼,河童,竹取物語などという昔からの闇の世界や,坂本竜馬,熊野古道などの歴史の謎を,現代の殺人事件にからめて解決する本格推理小説で,謎解きの面白さに溢れている,私の好きなシリーズです。
今回の作品では,百人一首マニアの富豪殺人事件の謎と百人一首自身の謎を,このシリーズの名探偵,漢方薬局に勤める薬剤師,桑原崇が解決します。どちらかというと,現代の殺人事件の方より,なぜ百人一首は各作者の代表作でなく,駄作が多く採られているかという百人一首の謎を解く方に力が注がれています。現代の殺人事件の方は,自分自身薬剤師であるの著者による薬学・医学知識を生かしたミステリーで,読者にとって興味深々な不思議な現象が被害者によって語られるものの,その解決は医学的,薬学的なもので,解決のカタルシスはいまいち。メイントリックも,医学知識を持っていないものには解決しようもないものですが,聞いてみれば素人にも十分理解できて,それはそれで面白い。
この作品,百人一首をよく知らない私は,おそらくこの本の1/10くらいしか楽しめていないと思います。百人一首を覚えている人ならば,この作品の中心テーマといっていい百人一首の謎解きの方も,十二分に堪能できただろうと思います。読者が決して百人一首をよく知っている必要はありませんが,知っていれば10倍楽しめる作品でしょう。
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