津原泰水「ルピナス探偵団の憂愁」
津原泰水著「ルピナス探偵団の憂愁」は,4篇の作品を収める短編集です。
ルピナス探偵団と言うのは,ルピナス学園というミッションスクールに通う3人の女学生と一人の男子生徒による非公式の探偵団。メンバーの一人の姉の刑事が持ち込んだり,主人公達の身の回りで起こる事件を描いたのが,この作品の前作,「ルピナス探偵団の当惑」という短編集。その「当惑」では,彼らの高校時代の事件が描かれますが,今回の「憂愁」では,その続編として,彼らの高校卒業時,大学生時代,そして社会人として25歳になった彼らの周りで起こった事件が描かれます。しかも,25歳の事件からさかのぼり,最後の作品が高校卒業時に学校で起こった事件なのです。その25歳の時の事件では,メンバーの一人の病死とその彼女の生前の奇妙な行動がメインテーマになります。本書は,そこから1篇づつ時代がさかのぼり,高校卒業時で終わる作品集になっているのです。なんだか,彼らがメンバーの一人の葬式に集まって,過去の探偵団の思い出をフラッシュバックしていくように感じます。作品が過去へさかのぼるように配置されたために,ちょっと独特の感慨が生まれる短編集になりました。
メンバーの死と彼らの成長によって,もうあの頃(高校時代)のルピナス探偵団は戻ってこないと思うと,ちょっとさびしい気もします。
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