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2008/01/12

米澤穂信「夏季限定トロピカルパフェ事件」

 昨日,「ここのところすっかり読書づいている」と書いたのですが,実は,創元推理文庫の作品中,これまでなんとなく敬遠してきたものも読んでみようと何故か思いたってしまい,勤めて読書するようになったのです。
 そんな,これまで敬遠してきた作品の一つが米澤穂信の「春季限定いちごタルト事件」と「夏季限定トロピカルパフェ事件」です。
 「小鳩君と小佐内さんは,恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。・・・・ コメディ・タッチのライトなミステリ。」という解説で,「若者向けのライトノベルのミステリー版だね」と,これまで思っていました。
 で,実際「春季限定いちごタルト事件」の方から読んでみると,最初のうちは確かにそんな感じでしたが,実際のところ,主人公達が「小市民を目指す」からには「実際は小市民ではない」と言う事で,小鳩君は人の事件に首を突っ込み,頭のいいところを見せて解決してしまう人,小佐内さんはやられたらねちっこくやり返す復讐を無上の楽しみとするという性格。彼らは自分たちを狐と狼になぞらえるほど。そのために,中学生時代,他人に誤解されたり嫌がられたりした経験を持ち,そんな性格を直すために「小市民」になろうと努力している事がだんだん分かってきます。そこら辺の悩みも書き込まれ,ミステリー的にも短編が集まって一編の長編になっているという構成,1台のひしゃげた自転車から推理して金融詐欺事件を解決してしまうというケメルマンばりの内容,なかなかどうしてライトノベルなどと言っている場合ではありません。
 続けざまに読んだ「夏季限定トロピカルパフェ事件」の方も,誘拐事件の発生に「小市民」を封印せざるを得なくなった小鳩君の迷いなども書き込まれ,最後の小佐内さんに関して展開する推理,そして二人の置かれた状況に関する会話など,さらに読み応えがありました。
 これはもう二人の今後の関係を心配せざるを得ず,「秋季限定・・・」と「冬季限定・・・」を期待してしまいますが,なんとなく「夏季限定・・・」でこのシリーズが終わってしまうような気がしないでもありません。

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