谷原秋桜子「砂の城の殺人」
先日このブログに書いた,「創元推理文庫の中で,今まで敬遠していた作品を読む」というシリーズを続けています。
今回読了したのは,谷原秋桜子の3作品,「天使が開けた密室」「龍の館の秘密」,そして今回紹介する「砂の城の殺人」です。
この3作とも,スペインで行方不明になった写真家の父を探すために,実入りはいいが奇妙なアルバイトに精を出している女子高生,倉西美波を主人公にしたライトノベル感覚の推理小説です。美波とその江戸前の友人の直海,大金持ちのお嬢さんのかのこの3人が活躍します。「砂の城の殺人」では,アルバイトで廃墟写真家の助手となった美波が行った先のぼろぼろの洋館で発見されたミイラ,次々起こる不可解な殺人事件・・・。直美が,かのこが推理しますが,結局その推理を修正して完全に解決するのは,美波の家の隣にすむ大学生,修矢でした。
確かに高校生を主人公にしたライトノベルかもしれませんが,しっかり「本格推理小説」しています。ミイラが殺人を犯したと思えるような状況もあり,宙をまう状況もあり,本来ならば不可能興味が刺激されるところですが,いまひとつ背中がぞくぞくするところまではいきません。口の悪い名探偵,修矢をはじめとして登場人物が余り性格が良くないのが興ざめな感じです。江戸前の直海,周囲に気配りのできるお嬢様,かのこはいいのですが,泣き虫の主人公,美波が,私の好きなタイプではないということもあり,小説としてもう一つ乗り切れないという感覚もあります。しかし,さらっと読める「本格推理小説」として,このシリーズの新作が刊行されれば,おそらく読むことになるでしょう。
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