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2009/01/24

派遣の前には,請負が居た

 この不況で,派遣切りが横行しています。
Asahi_2 派遣社員は,もちろん派遣会社からそこと契約した会社に派遣された者ですが,最近悪名高い派遣法成立以前から,職場にその会社の社員以外の人がいる事はありました。請負制度の下で働きに来ていた人々です。
 請負は,要するに下請け会社がその会社から仕事を請け負うものです。その働き場所が仕事を発注した会社の工場やオフィスであれば,見た目の形は現在の派遣と同じでした。ただ正確に言うと,請負の場合,派遣先の会社の社員から仕事の指示を受ける事はありません。なにしろ,下請けで一括して仕事を請け負っているのですから。
 ところが実態は,今の派遣と同じように,仕事を発注した会社の社員の指示を受ける事が多く,法律違反が横行していました。実際,発注会社の建物の中で,発注会社の社員と一緒に働き,発注会社の仕事をするのですから,本当は発注会社の社員から指示を受ける方が自然です。そんなこんなで,請負は派遣に取って代わられていったわけです。
 今回の派遣切りに関する議論の中で,テレビや新聞,さらに政治家の座談会などで昔の請負いのことに言及された事がほとんどありません。民主党などは,規制緩和で製造業への派遣を許したのがけしからんというので,昔のように製造業への派遣を禁止するよう,法律の改正を主張しています。しかし,禁止した時に,以前の請負に戻るのかどうか,つまり派遣が禁止されても,請負という不況時の企業にとっての安全弁が残るのかどうか,また請負いに戻った時に何か弊害はないのかどうか,そんな議論が不足しています。共産,社民,国民新党の3党などは,「派遣労働が原則自由化された99年の改正より前の時点まで派遣法を戻すという基本的立場を確認」してしまっています。つまり製造現場等への派遣は,請負制度に戻すという事です。請負制度に「まずい」点があり,それで派遣制度に代わってきた事を忘れてしまっているかのようです。また,請負も禁止した時,日本の企業が世界の企業と互角にやっていけるのかどうかも考える必要があります。やはり正社員以外の労働形態については,もっともっと考えたり議論したりする必要があるでしょう。単に99年度以前の制度に戻すなどというのではなく,今の派遣でも請負でもない,なにか新しい形態を作り出さなければならないのだと思います。

(写真は,朝日新聞社刊 朝日新書の一冊。仕事を発注した会社の社員の指示を受けるという,請負制度の下での法律違反を取材したルポ。)

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