柳 広司 著 「百万のマルコ」
創元推理文庫の一冊,柳広司の「百万のマルコ」を読みました。
280ページ程の,さほど厚くない本の中に13編の短編が詰まっています。したがって,一編の長さは短めです。舞台は13世紀イタリアジェノバの牢獄。当時イタリアの各都市国家は,独自の軍隊を持ち,時として商売敵の商船を拿捕して商人たちを捕虜とし,身代金をとるということがありました。そんな牢獄の一室で,捕虜となっているのが様々な職業の6人の若者とベネチア人の老人。その老人が「百万のマルコ」,マルコポーロです。
各編とも,マルコポーロがその昔,モンゴル帝国の皇帝フビライ・ハーンの下で暮らしていた時の出来事を捕虜仲間に話すのですが,話が佳境に入ったとたんに,「・・・というわけで,大ハーン殿もいたくお喜びになったのである。神に感謝,アーメン,アーメン。」などと,謎を残しながら尻切れトンボに終わってしまいます。その後に残った謎を,捕虜達がひとしきり議論し推理しますが,結局マルコがその思いがけない真相を語って終わります。
これは,アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」や「ユニオンクラブ綺談」の日本版(というかイタリア版というか)です。しかし,扱われる謎と解決は,数編を除いてまるでクイズのような「黒後家蜘蛛の会」や「ユニオンクラブ綺談」よりずっと機知に富んでいて,ずっと面白いと思います。柳広司を読んだのはは初めてでしたが,これから嵌っていく予感がします。
| 固定リンク
コメント