後藤 均「ゴルディオンの結び目」
先日紹介した後藤均の「写本室の密室」「グーテンベルクの黄昏」に続いて,同じ作者の「ゴルディオンの結び目」を読了しました。
第二次世界大戦直後を舞台にした「写本室の密室」の登場人物たちが,1968年のドイツで新しく開館する美術館の開館式に集います。その開館式で,1つの襲撃事件と2つの殺人事件が起こります。「写本室の密室」の登場人物,星野画伯の娘であるエリカと夫の富井教授もその場に招待されて居合わせますが,結局その犯人は分かりません。そこでドイツ当局は,その時と同じメンバーをある個人所有の美術品鑑賞ということで地中海のマルタに集め,犯人探しを始めます。しかしそこで,さらに4件の殺人事件が起こります。密室状態のそのマルタの小島を舞台にして起こった殺人事件に対する,富井教授とエリカによる犯人探しの物語が本書の主題です。
これまでの2作は,星野画伯の手記を読んだ富井教授が謎解きを行いますが,謎の解明が関係者の述懐などで行われ,必ずしも推理によらないために本格推理小説味を薄くしていました。ところが本書では,富井教授と妻であるエリカの推理が存分に行われ,ずっと本格推理小説っぽい作品になっています。現代が舞台の謎解きであり,前2作のような歴史推理の面白さはありませんが,本格推理ファンとしては満足しました。
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