エドワード・D・ホックの「サイモン・アークの事件簿 I」
エドワード・D・ホックの作品は,以前「サム・ホーソーンの事件簿VI」を紹介しましたが,既にサム・ホーソーンシリーズを全て読み終わってしまったので,次に手を出したのが「サイモン・アーク」シリーズです。
サイモン・アークは,自称,サタンを探して世界を旅しているという2000歳のコプト教徒という設定で,そう聞くとなんだか胡散臭そうな人物なのですが,実際にはニューヨークにオフィスを持ち,大学で研究を行っている者で,警察やアメリカ政府からも依頼を受ける人物です。
描かれる事件は,一見超常現象的な事件ですが,サイモン・アークにより合理的に解き明かされます。サイモン・アークは,胡散臭く神秘的な人物として紹介されますが,むしろ学者かある時はビジネスマンのようにも見えてしまうというのがどうなんだろうと思います。はじめから神秘学を研究する学者として設定してもよかったように感じます。おそらく,サイモン・アークものの第一作「死者の村」から,アークの人物設定が決まったのでしょう.その後,この人物設定が重荷になってしまったような気がします。
とにかく,語られる事件は十分不思議で,それが合理的に解決されるという事で,正に推理小説の醍醐味が味わえます。サム・ホーソーン物の不可能犯罪とはまたひと味違った超常現象的事件が描かれ,やはりホックは面白いという認識を新たにする,そんな短編集です。早く第2集を刊行してください。
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