東川篤哉の「密室に向かって撃て」
東川篤哉の長編「密室に向かって撃て」を読了。
題名で密室といっても,文字通りの施錠された部屋ではなく,岬の突端にある家のテラスでの銃殺事件を扱った作品です。つまり,密室状態での殺人事件であり,犯人は海へダイビングしたとしか思えない状態で,警察は海を捜索しますが,登場する警部,刑事をはじめ,登場人物達も読者も,誰もがそうは思っていないという不可能殺人が描かれます。
私立探偵の鵜飼と助手の戸村流平が探偵役を勤める烏賊川市(いかがわし)シリーズの一作で,ユーモアミステリーという事になるのでしょうが,作品の骨格はしっかり本格派です。
この作者の作品を読むのも本作で3作目ですが,本格派ミステリーの骨組みと解決に至る推理には感心するものの,どうも犯人の意外性が今ひとつなのですね。本作についても,この不可能犯罪をどうやって実現したかは分からないが,一番犯人っぽいのはこの人だと思っていた人がやはり犯人だったりするのです。
そこらへんに不満が残るのですが,ユーモアミステリーに包んだ本格派推理小説とうコンセプトはとてもいいと思うのですね。この作者の作品は,これからも読んで行こうと思います。
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