宮部みゆき「東京下町殺人暮色」
書店に行ったら,宮部みゆき著「刑事の子」という本が平積みされていました。
宮部みゆきの新作かと思い手に取ってみたら,「東京下町殺人暮色改題」と書いてありました。「東京下町殺人暮色」なら,文庫本で見た事があると思って探したら,光文社文庫で見つけて,それを買ってきました。この作品は最新作どころか,宮部みゆきの初期の作品で,1990年の刊行。私が買った2010年11月発行の文庫版は,65刷でした。
離婚した八木沢刑事とその息子,中学1年生の順,その親友,信吾,母のいない八木沢家の家政婦,ハナが探偵側の登場人物です。
彼らが住む街,東京下町を流れる荒川で腐敗したバラバラ屍体が発見されるところから話が始まります。屍体はそれ以降,様々なところから発見されますが,鑑定の結果1人のものではなく,2人の女性のものと分かります。その死体は,どうも一度土に埋められてから掘り起こされ,バラバラにされて各所に遺棄されたものらしい。
一方,彼らの街に流れる「町内の家で,女性が殺されたらしい」といううわさ話。それは今回の遺体発見とどうつながってくるのか・・・。
さくさく読めるのであっという間に読了してしまいました。このミステリーも,最近話題となる社会的な主題があるのですが,それを書くと読むときの興味をそがれる可能性があるので,うかつに書けません。
宮部作品は背中がゾクゾクしてくる謎を味わうようなミステリーではなく,途中で本の終わりの方を覗く誘惑に駆られるという事はありません。面白さは別のところに存在します。その意味で,水準以上の作品といえるでしょう。
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