加賀美雅之著「縛り首の塔の館」
加賀美雅之の「縛り首の塔の館」は5作品から成る探偵小説短編集です。実は私はまだ,この中の最初の作品しか読んでないのです。
最初の作品は本と同名の「縛り首の塔の館」です。
19世紀のイギリス。心霊術師が30マイル離れた屋敷に居る決闘相手を霊体化してナイフで刺し殺すという事件が描かれます。心霊術師は金属の鎧の中に入り,5人の人物の誰かに常に監視されています。そんな監視の中,全く異常が無かったにもかかわらず心霊術師は鎧の中で射殺死体として発見されます。一方決闘相手は,拳銃を握った刺殺死体として発見されます。決闘相手が霊体化した心霊術師に発砲したとしか思えない状況です。鎧には銃創がありません。
この様に,この作品はミステリーとしては時代錯誤的な作品です。しかし私はそんな作品が大好きです。20世紀前半の欧米の探偵小説黄金期の再現です。実際のところ,黄金期の作品をあらかた読んでしまい,こんな作品を渇望していた者にとっては狂喜する様な作品です。
しかし,シチュエーションが不思議でかつ特異であればある程合理的な解決方法は限られ,トリックが分かりやすいんですよね。現場の図を一目見れば,トリックは分かってしまいます。犯人も登場したとたんに「こいつだろう」と思ったのですが,やはり「こいつ」でした。
そんな作品ですが,何はともあれ,欧米の黄金期探偵小説を再現したこの短編集の後の作品を読むのが楽しみです。
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