加賀美雅之著「人狼の影」
加賀美雅之の短編集「縛り首の塔の館」の第一作について,先日このブログで紹介しましたが,第二作が「人狼の影」という作品です。
女性5人の殺人事件が起こります。いずれも喉を食いちぎられ,身体中に噛み跡を残した死体としてとなって発見されています。そんな状況で,落し物の手帳が発見され,そこには殺害された5名の名前が記載されていました。これは犯人が落とした被害者リストだという事になったわけですが,この手帳には6番目の名前が載っていました。警察はこの6番目の被害者宅を警護しますが,予想通り,まんまと殺害されてしまいます。
死体の状況から人狼と呼ばれる犯人ですが,登場人物の一人が現実にはあり得ない証言をし,それが勘違いや見間違いではあり得ないシチュエーションなので,読者には6番目の殺人事件の犯人が簡単に分かってしまいます。そうすると後の展開もだいたい分かってしまい,真相の意外性が無いんですね。
探偵小説好き向けの,ある意味マニアックな作品であるにもかかわらず,探偵小説好きには「見え見え」というジレンマ。ここら辺が著者の課題かもしれません。
さて,この短編集三作目はどんな作品でしょうか?
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