乾くるみ著「蒼林堂古書店へようこそ」
乾くるみの「蒼林堂古書店へようこそ」は,秀作の多い古書店物の推理小説短編集です。
蒼林堂古書店は店の奥に小さなカフェのあるミステリー専門の古書店です。カフェと言っても100円以上の古本を買ったり,100円以上で古本を売ったりしたお客さんに無料で珈琲を振る舞う為のカウンター。
ここに,店の主人の高校時代の同級生であったバツイチの40男,ミステリー好きの2人の男子高校生,小学校の教師になったばかりの美人先生という常連客達,それにミステリーのコラムなども書いているこの店の主人が集い,身近に起こった小さな事件や事件にもならない日常の謎を話し合い,結局店の主人が謎を解き明かすというパターンの作品集です。
350ページ余りに14本の短編が入っているので,一つ一つの作品はとても短い物となっており,出てくる謎もごく小さなものです。そんな小さな謎でも,それなりに面白く読む事ができます。
さらにこの本の特徴は,各作品の終わりに,店の主人が書いたという体のコラムが入っている事です。ヒチコックに関係した作品の後には,ヒチコックとミステリーに関するコラムが,外部と隔絶した場所に関する作品の後には,そんなミステリーに関するコラムが載っているという具合。このコラムを読むのも楽しいものです。
また一つ,古書店物の秀作を発見しました。作者には,できれば続編をお願いしたいところですが,本作はハッピーエンドで長編として(連作短編集ではありますが)まとまっているので,続編は無しかな?
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