宮原龍雄著「三つの樽」
宮原龍雄は,主として1950年〜1960年に探偵小説作品を発表した作家です。その「三つの樽」という作品は,名前と簡単なプロットは何かで読んで知っていたものの,作品としては読んだ事がありませんでした。
最近Twitterでこの「三つの樽」についてつぶやいている方がいて,そのtweetに触発されて読んでみたくなり,アマゾンで注文してしまいました。
「三つの樽」は不可能興味に溢れた短編です。樽を積んだオート三輪車が後続の車に追突され,樽が車から転げ落ちた衝撃で樽が壊れ,中から女性の屍体が発見されます。ところがこの樽は,その屍体となった女性が発送に立ち会い,オート三輪車の出発を見送っているのです。オート三輪車は出発からその5分後の事故まで,後続車によって見張られた状況にあり,樽のすり替えはできませんでした。
短編にまとめる為か状況の説明的な文章が主体で,人の行動とか人物描写とかはあまり書き込まれていません。その為に犯人は誰かというより,どのようにしてこの不思議な状況を作ったのかという興味だけで読ませる作品になっています。その犯行の説明は,最後の章で唐突に明かされ,奇術を見ていて時間がないからと,最後の詰めを省略されて突然種明かしをされたような感覚でした。
せっかく不思議な状況を作り出したのに,作品としてはちょっと残念でした。
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