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2012/04/29

歌野晶午「死体を買う男」

Shitaiwokauotoko

 このところ芦辺拓作品を続けざまに読んできましたが,ここで目先を変えて歌野晶午「死体を買う男」を読みました。
 私こと「江戸川乱歩」と高名な詩人「萩原朔太郎」が登場する探偵小説が文芸雑誌に載ります。それは江戸川乱歩の文体を持った,実際に友人同士であった乱歩と朔太郎による探偵物語「白骨鬼」でした。その問題編を読んだ探偵作家である細見辰時がその小説の素性を調べ始めるところから話が始まります。
 この「白骨鬼」は,断崖の際に立つ樹木での縊死屍体が発見され,発見者が通報に行って戻ってみると縊死体が亡くなっており,それは強風で断崖から海へ縊死体が飛ばされたと思われ,その縊死者が双子の片割れである事が分かり,失われた死体とよく似ている一卵性双生児が登場するとくれば,「入れ替わり」という言葉が読者の頭をよぎり,歌野晶午がそんなミエミエのトリックを使う筈が無いと思い・・・・。結局この「死体を買う男」という作品は,期待を裏切りませんでした。
 「白骨鬼」の謎も,現実の謎も,明かされてみれば読者を裏切りません。340頁余りの作品をスイスイ読んでしまい,思いのほか短時間で読み終わりました。おかげでアマゾンに頼んである次の芦辺拓作品が届く前に読み終わってしまい,その意味で当てが外れたのですが,とにかく読みやすい作品でした。これはひとえに「白骨鬼」の乱歩調の文体のおかげであろうと思います。いままでそれほど意識した事は無かったのですが,乱歩の文体は読みやすいのです。「死体を買う男」がスイスイ読めたという事は,歌野晶午がいかにうまく乱歩の文体を真似ているかという事ですね。

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