高田崇史著「諏訪の神霊」
高田崇史の「諏訪の神霊」を読みました。歴史ミステリーと現代の犯罪を絡めて描くQEDシリーズの一巻です。
おなじみの薬剤師コンビ,桑原崇と棚旗奈々が,謎の多い奇祭,長野県諏訪大社の「御柱祭」やそれに関連する「御頭祭」など,諏訪地方に伝わる謎の祭りの意味を求めて諏訪を訪ねます。一方,その地の新興住宅地では,連続殺人事件が起きていました。それは,御柱祭で亡くなった人を巡る殺人事件らしい・・・。
高田崇史のQEDシリーズは,歴史ミステリーの好きな私好みの推理小説です。「諏訪の神霊」で15作目になるシリーズですが,その出来は,ひとえに現代の事件部分の善し悪しに掛かっている様に思います。
本作の歴史部分の謎については申し分ありません。神様と見なされる御柱が,伐採されてから縄をかけられ地面を延々と引きずられ,最後には急坂を落とされ,その際には神様である御柱に人々が我先にまたがる・・・,それが神様に対する扱いなのか?,御柱には実は別の意味があるのではないか? そう言われてみると確かにそう思います。例えば,(神道と仏教の違いありますが)御柱が観音様の立像であったら・・・,そんな彫刻でなくても,材木に観音様のラフな絵が書いてあるだけでも,日本人ならもうそんな扱いはできないでしょう。
ところが,現代の部分があまり面白くないんです。やたらと人が死んで,意味ありげなアイテムがその現場に残されたりしているのですが,謎的興味はあまり感じられないのです。崇・奈々のコンビも,登場早々に事件の話は耳にするものの,この現代の事件に実質的に関わるのは最後になってからですしね。
というわけで,歴史ミステリー部分は面白かったものの,現代ミステリー部分のおかげで,全体的には「もう一つ」という感じになってしまいました。
さてこのQEDシリーズ,第17作目「伊勢の曙光」で完結しています。あと2作,読むのが楽しみです。
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