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2012/11/19

大阪圭吉の短編「坑鬼」

Oosaka_keikichi 昭和20年,終戦直前に33歳で戦地で病死した探偵作家,大阪圭吉。探偵小説好きの方は,名前くらいは知っているのではないでしょうか。過去の作家ですが,いろいろな探偵小説アンソロジーに取り上げられている作家です。私も,たしか「とむらい機関車」だったと思うのですが,鮎川哲也編の鉄道ミステリーを集めたアンソロジーで読んだ事があります。
 さて,ぶらりと近所の本屋に寄ったら,大阪圭吉氏の本が平積みされていました。創元推理文庫から出ている短編集「とむらい機関車」と「銀座幽霊」の2冊です。2001年に出版されたもので,なぜ今頃平積みされているのか分かりませんが,これは買わなければならないと思いました。
 しかしこのところ,電子ブックで本を読むのがいろいろ具合がいいので,まずこの2冊をKindle storeで検索してみました。「大阪圭吉」で検索すると,創元推理文庫の2冊はなかったのですが,短編19編が出てきました。しかも0円です。「とむらい機関車」や「銀座幽霊」もあります。パブリックドメイン旧作を電子化するボランティア団体がありますが,どうもそのプロジェクトの手により電子化されたものらしいですね。早速購入(0円ですが)しました。そうしたら律儀にもアマゾンから,いつもの「御購入ありがとうございました。」という購入確認のメールが19通も来てしまい,面食らいました。無料でもあくまでも「購入」扱いなんですね。
 さて手始めに,この中の「坑鬼」という作品を読みました。炭坑の火災事故に絡む不思議な人間消失と殺人事件を描いたものです。謎的興味が満点の作品ですが,作者は大上段に「不思議」を振りかざすのではなく,炭坑の状況とそこで働く男女の事から話をはじめ,そんな状況に目を奪われていると,やがて読者はふしぎな状況の中に居る事を発見するという,そんな感じの作品です。まるで探偵小説で無いかのようにはじまり,ごく自然に「謎と不思議」の中に身をおいていることを発見するという感じ。昨今の新本格派の諸作より,「小説である事」を感じます。
 大上段に「不可能と謎」を振りかざす推理小説と一線を画しているような作品です。それはこの作品だけではなく,大阪圭吉作品の特徴でもあるのでしょう。まあ私は,大上段に「不可能と謎」を振りかざす推理小説も好きなんですがね。

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