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2013/05/04

憲法96条改正

Yahoo_news たまにしか政治に関心を持たない私にも,既に某党関係者から7月の参院選候補者の紹介パンフレットが送られてきました。その参院選の争点になるとかならないとか言われている憲法96条改正。憲法改正の発議条件を規定する憲法条項です。
 政府自民党は,この発議条件を緩和する為に,96条改正を行おうとしています。一方,自民党と連立を組む政府公明党は,この96条改正に対しては慎重な姿勢を崩していません。
 現状の96条では,「各議院の総議員の2/3以上の賛成で国会が憲法改正を発議し,国民に提案してその承認を経なければならない」としています。憲法改正の承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行なわれる投票で,その過半数の賛成を必要とします。
 私はと言えば,「総議員の2/3以上の賛成」を「過半数の賛成」に変更する事はやぶさかではありません。現状をみても,2/3では,選挙などに対する党利党略に左右されやすく,純粋な憲法改正発議への賛否よりも各党の都合で審議にも入れない状態になる事が多いようですからね。
 ただし,「国民投票の過半数の賛成」で憲法改正ができるとした条項の方を,もっと厳しくするべきと思います。「国民投票の過半数」というのは,「国民の過半数」ではなく「実際に投票した人の過半数」という事ですから,投票率が30%であるならば,積極的に憲法改正に賛成した人が国民全体の15%以上であれば憲法が改正されてしまうのです。いまの96条は,国会で議論に入るための条件の方がたいへん厳しく,国民の審判の方が軽く考えられすぎていると思うのです。審議を始める条件が厳しく,実際の国民による憲法改正の承認の方が軽いというのは,何だか本末転倒であるように思います。
 私はこの「国民投票の過半数」を「投票権を持つ国民の過半数」とすべきと思います。これならば,投票率が低い時,投票した人の全員が賛成しても,憲法改正は否決されます。憲法改正は,国民の過半数が「積極的」に賛成しなくてはならない大問題だと思います。投票を棄権する様な,消極的な賛成や消極的な反対の人や,よくわからないという人が多く居る状態では,憲法改正を行うべきではないと考えています。
 「政治家は信頼できないから,この96条の条件を緩和してはならない」という人もいるんですが,これもよく分かりません。政治家が信頼できないなら,なおの事,国民投票の方を厳しくするべきではないですか?
 この96条があるから,これまでの改憲論にも対処できたのだという話もありますが,国会で議論に入る事を阻止してどうするのでしょう。その議論を踏まえて,国民投票の段階で阻止すべきは阻止すればいいでしょう。
 96条の発議条件を「議員の過半数」にしたら,「憲法改正など政権与党(=議員の過半数を握っている政党)の思いのままになる」という意見もありますが,その後の国民投票を無いがごとく扱い,国民を信用していないかのようなチョー上から目線の意見に反感さえ覚えます。
 憲法学者などの先生は,国会の意義等難しい事を言うのですが,また国民投票を軽く扱っているようにも思えます。国民が選んだ国会は,国民の代表によって成り立っているのだから,国民投票よりそこが決める事を重視するのは当たり前だという意見です。しかし実際の所,最近行われた衆議院選挙にしても,いったい何人の有権者が憲法改正の事を考えて投票したんでしょうか? TPPに対する各候補者や政党の意見を参考にして投票した人は居るかもしれませんが,あの投票で憲法改正に対する各候補者の意見を調べて投票しましたか? 参議院選挙に至っては遥か昔の出来事で,そのとき憲法改正に関する各候補者の意見を考えて投票した人は珍しいのではないですか? つまり現在の議員は憲法改正以外の観点で選ばれている人が大半です。今,各議員の憲法改正に関する意見を明らかにした上で両議員の選挙を行った場合,今と同じメンバーが選ばれるでしょうか? 憲法改正の様な大問題でなければ,国民の代表である議員の意見で法律なり改正なりを決めてもいいのです。しかし憲法改正は大問題であって,だからこそ国会の議論が終わった後に国民投票を行う様に定められているのだと思います。そんな場合,国民の意見は(昔の選挙結果ではなく)国民投票にこそ反映され,その結果が重く尊重されなければならないと思います。
 また,「各議院の総議員の2/3以上の賛成」というのは,世界的に見てもそれほど厳しい条件ではないという意見もあります。日本でも議員の2/3以上の賛成を必要とする場合というのがあって,代表的なのは,衆議院で成立し,参議院で否定された案件が衆議院へ戻ってきた場合,衆議院議員の2/3以上の賛成で成立するとう事が挙げられます。それなりに重要な事は2/3の賛成となっているのです(憲法改正の2/3が「両議院総員の2/3の賛成が必要」であるのに対して,その他の問題の2/3は,「議会出席者の2/3」となっていて,条件としてはそれなりに軽くなっていますが)。それを1/2に緩和したのでは,重要な憲法の事であるにもかかわらず,一般案件と同じ重み付けになってしまうではないかという話があります。一応もっともな意見だとは思いますが,1/2の賛成で決めるのは,憲法改正それ自身ではなくて,「憲法を改正するべきか議論を始める事」なのです。憲法改正に至る前に,さらに国民投票が控えているのです。そこを考えなければいけません。
 国民投票など,マスコミによっていくらでもコントロールされてしまうから,「当てにはならない」,つまり国民投票の防波堤をいくら高くしても,そんな防波堤は当てにはならないという事を言っている方もいます。国民投票が当てにならないのならば,国会議員選出のための選挙も当てにならないのであって,そんな選挙で選んだ国会議員など,さらに当てにならないのではありませんか? その考えに従えば,国民投票の時だけではなく,国会議員選出時にもさぞマスコミからの影響を受けている事でしょう。国民投票など当てにならないと考えれば,国民による国会議員選出選挙も当てにはならず,マスコミの誘導によって,憲法改正に賛成する党に対し,各議院の総議員の2/3以上の議席を与える事もできるということになりますね。国民の投票行動など当てにならないという意見であり,投票行動による民主主義など成り立たないという,大胆な意見です。今時こんな意見を持っている方が居るということに驚きます。

 私の考えは単純です。「国会で議論を始める条件は何故厳しくなければいけないの? 緩くてもいいでしょう。どんどんさっさと議論を始めなさい。じゃあ,いつ憲法改正の条件を厳しくするのか・・・,国会での議論が終わった後でしょう。」というのが私の考えです。憲法改正のハードルが,議論を始める前に厳しく,議論が終わった後で緩いのを改め,議論を始める前に緩く,議論が終わった後に厳しくするという,ハードルの高さのバランスの改正を行うべきだという事です。

 国民投票の際に気をつけなくてはならないのは,国会で決まった改正案の文面に対する賛否を問われている事です。国民投票では賛成か反対かのみ投票する事になりますが,それは「漠然と憲法改正に賛成か反対か」ではなく,「国会で審議され,国民の前に提案されたその改正文面それ自体に対して賛成か反対か」を問われているのです。国民は,その憲法条項に対して,何らかの改正が必要であると考えている人も,少しでも憲法改正案の文章が気に入らなければ,国民投票では「反対」しなければならないのです。それさえ国民が気をつければ,大丈夫,容易に憲法改正はできませんよ。

(Yahoo newsから拝借した冒頭の図には間違いがあります。「国民投票」欄に「18才以上の日本国民の1/2以上の賛成」とありますが,現状では18歳以上ではなく20歳以上です。また,96条のこの部分の曖昧な規定に付いては過去に議論があり,現在では別の法律によって「有効投票数の過半数」の賛成を以て改正が承認されると定められています。投票者の1/2であって日本国民の1/2ではありません。この法律を改正して,「日本国民(有権者)の1/2」とすればいいのです。)

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コメント

96条の問題についてググって、いくつかのブログを見てみると、やれ安倍がどうしたの、石原がどうしたの、橋下がどうしたのと、まず特定政治家に対する意見から入るブログが多いです。それに違和感を持っていました。そこいくと、このブログは人名が全く出てきません。私と意見が一致するかどうかはともかく、その点に共感を覚えます。他のブログも、このくらいスッキリ論述して欲しいですね。
プロフィールを見ると理科系の方の様で、さすがに政治家に対する情感溢れる文科系のブログとは違うと思いました。

投稿: Pado | 2013/05/27 22:04

 Padoさん,コメントありがとうございました。
 論述と言える程のものかどうかは分かりませんが,96条に限らず,政治関係のブログというのは,とかく人(政治家?)についての論述(笑)ありきという感じである事は,「ちょっとウザイ」という気はしていました。まあ,人に関する論述も大事なのかもしれませんがねえ・・・・・。
 しかし,文科系/理科系という見方ができるとは思いませんでした(笑)。

投稿: Alice堂 | 2013/05/27 22:27

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