竹本健治「汎虚学研究会」
「汎虚学研究会」は「匣の中の失楽」の作者,竹本健治のミステリーです。同氏の作品としては,先日,比較的初期の作品,「狂い壁 狂い窓」を紹介しました。
さて,この「汎虚学研究会」は,1本の中編と4本の短編から成る作品集です。どれも,共学のフランス系ミッションスクール,聖ミレイユ学園の汎虚学研究会というサークルの生徒達が主人公になっています。このうちの中編「闇のなかの赤い馬」は,以前紹介した綾辻行人の「びっくり館の殺人」と同じ,講談社のミステリーシリーズ「ミステリーランド」の一篇です。ミステリーランドは「少年・少女時代の著者自身に,大人になった現在の著者が贈るミステリー」というコンセプトの書き下ろしシリーズで,ジュブナイルといってもいい作品がラインナップされています。
今回の中・短編集は,この中編作品のみが本格推理小説と言えるでしょう。学園の神父の密室での焼死事件を,汎虚学研究会の面々が解いていきます。
他の作品はホラーであったり,幻想小説であったり,推理小説とは言いがたく,この作者らしいと言えばこの作者らしいのですが,私としてはおまけの様な作品でした。おまけと言っても楽しめるし,推理小説にこだわらない方は,こちらの方がお気に召すかもしれません。その中でも「世界征服同好会」は,比較的万人向けで分かりやすい作品と言えるでしょう。
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