京極夏彦の「絡新婦の理」を2度読み中~特殊慰安施設協会の事
Twitterがきっかけになって,京極夏彦の大長編推理小説,「絡新婦の理」を読んでいます。これは大分前に1回読んでいるので,今回は2度目です。この題名,なかなか読めないと思いますが,「じょろうぐも の ことわり」と読みます。
現在全編の2/3位まで読み終わりました。これからおなじみの京極堂,中禅寺秋彦が聖ベルナール学院へ乗り込んで,大団円となります。
実は私,この作品の犯人を知っているのです。まあ2度目ですからあたりまえなのですが,スジは完全に忘れていたのに真犯人だけは覚えている。なぜ印象に残っているかというと,この真犯人は,京極夏彦の次回作「塗仏の宴」にも,今度は被害者として登場しているからなのです。
そんな作品の中に,「特殊慰安施設協会」というのが出てきます。RAAと略称された国立の組織です。戦後の占領下の日本で,進駐軍の狼藉(市中で日本女性が米兵に襲われる)を防止するために作られたもので,要するに米兵相手の売春婦(慰安婦)がいた慰安所なのです。この作品の中では,RAAが真犯人の動機の一つに係わる重要なモチーフになっています。それなのに,本の中で言及されるのはほんのわずかという扱いです。
この組織,ひょっとしたら京極氏の創作かと思ったので調べてみると,本当にあった組織らしいですね。Wikipediaで詳細な内容が解説されていています。この施設に言及している小説として,田村泰次郎のベストセラー小説「肉体の門」と松本清張の「ゼロの焦点」が挙げられていますが,「絡新婦の理」もそんな小説のひとつなのです。
最近の米兵による沖縄などでの犯罪に対して,「このような施設を利用したら」と言って叩かれた市長がいましたが,同じような発想は時代の何時を問わず出てくるのですね。ある意味,自然な発想なのかもしれません。
ところで,慰安婦に対して「女性蔑視云々・・・」という発想をする方がいますが,たまたま兵隊が男性だったから女性の慰安婦が生まれたわけで,アマゾネスのような女性の軍隊があれば慰安婦は当然男性であり(この場合は慰安夫),ゲイで編成された部隊があれば,当然男の「慰安兄貴」となるのであって,慰安婦が女性である事は本質的な問題ではないと思っています。しかしまあこれも,現在の目線で見ればという話かもしれませんね。戦時中の従軍慰安婦から戦争後のRAAの時代には,慰安婦に対して,女性蔑視の目線があったんでしょうか? そんな時でも,どちらかというと,男性からの目線より,一般女性からの目線の方が,彼女達に対する目線は厳しかったような気がします。それは現代でもそうではありませんか? 某市長の発言に対して,男性の多くは「たてまえ」として反論しているらしいのに対して,女性の中には本気で怒っている人も居て,女性の多くが,慰安婦という存在を蔑視している事がわかります。
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