民主主義の素地がない?
ムスリム同胞団のモルシ前大統領が軍のクーデターによって追放され,暫定内閣が発足したエジプト。
独裁政権を倒した筈のアラブの春も,国を2分するムスリム同胞団派と反ムスリム同胞団派の対立による混乱を,軍が収めた格好です。
独裁を倒しても民主主義国にはなりません。民主主義国家になるにはそれなりの条件が必要です。前政権をたおしても,その後に対立があったら混乱するばかりです。民主主義国家では,考えの違う人を排斥するのではなく,考えの違う人の考えを考えてみる寛容さが必要です。それは元を正せば,教育の有無という事になると思います。宗教は大切ですが,それにスガルしかない状態では,とても民主主義国家にはなれません。
イランは表面的には上手く行っている様ですが,イスラム独裁政権による独裁体制が敷かれています。イランの体制も,国家の最終形態ではないと思うので,このままずっと続く事はないと思いますが,ある時期,ある課程では独裁も必要だと思います。「独裁政権」と「対立の中の民主主義と言われる政権」と,どちらの方が幸せな人が多いのかという事だと思います。
エジプトは産みの苦しみの時期であろうと思います。独裁政権からイスラム原理主義のモルシ政権となって,経済や治安などが悪化し,それにうんざりする国民を生みました。民主主義国では,そんな時,次の選挙によってイスラム原理主義のムスリム同胞団政権が退陣する事になります。エジプトのモルシ政権の任期は2年。それを待たずして軍によるクーデターが起こりました。民衆の味方のように見えるエジプト軍ですが,実はモルシ政権が軍と対立し,軍の既得権益を奪おうとしていた事が根底にある様です。普通の民主主義国家であるならば,2年を待ってそこで国民の審判を行う事になるのですが,そこまで待たずに政権が倒されたのは,国民の対立の激化と共に軍と前政権の前述の関係がある様です。軍のクーデター後に誕生する政権は,ある意味軍を背景とした独裁的な政権となるでしょう。そんな再度の独裁政権化とイスラム原理主義政権のどちらが今国民に受け入れられるのか,再選挙を行うしかない様に思われます。本来ならば2年後に行われるべき選挙なのですがね。しかしこの状況で,軍主導で,選挙無しに独裁政権化されれば,反対する勢力は過激化してテロの頻発となる事でしょう。
反モルシ派には,「政治は宗教に従属する」という政治姿勢への反発の他に,政権運営の失敗による危機的な経済やインフレの昂進など,モルシ大統領に反発するそれなりの理屈があります。しかしモルシ派には,正当な選挙によって選ばれた大統領であるという一点の他は,「政治は宗教に従属する」という事を好ましいと思うより他には理屈がない様に思われます。たしかに「正当な選挙で選ばれた」という事は重要ですが,多くの人々が選挙でモルシ氏に投票したのは間違いだったと思っている以上,近々にもう一回選挙を行うしかない様に思えます。クーデターによる政権ではなくて,もう一度モルシ氏と同じ様に,「正当な選挙で選ばれた大統領」を作る必要があると思います。
任期を残してのモルシ大統領退陣というのがクーデターによるというのがちょっと引っかかる訳です。政権の途中退場というのは,日本でもあります。最近では,経済的な行き詰まりなどの理由で国民の中で退陣機運が高まり,前の民主党野田内閣が1年近い任期を残して自ら退陣して選挙を行って交代しています。しかし,今回のエジプトの様に,政権自身の反省が無く,退陣など考えてもいない状態では,現内閣をクーデターによって強制的にでも下ろすという事をせさざるを得なかったという事情は理解できます。
−−−<追 伸>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
その後,エジプトは当然の事に,ムスリム同胞団の軍政に対する反発が起こり,デモ→鎮圧の連鎖が始まって多くの命が失われています。
しかしながら,エジプト一般国民のムスリム同胞団支持率は低下し,大局的にいうと軍政支持が広がっている様です。
エジプトでアラブの春の実現に力を発揮した若者達は,残念に思い意気消沈している様ですが,ムスリム同胞団の政治にも満足できず,ジレンマに陥っている様です。宗教を掲げた政権は,それだけでもう,排他的,独裁的にならざるを得ない運命にあり,本来寛容である事はできません。
軍政はもとより,ムスリム同胞団の政治も結局独裁的になり,結局の所,民主主義が根ずくのは時期尚早という事なのだと思います。
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