森博嗣著「四季 秋 The Four Seasons White Autumn」
工学博士の推理小説家,森博嗣の作品は,S&Mシリーズ,Vシリーズと読んできて,次は「四季シリーズ」という事になるのですが,このシリーズは処女作「すべてがFになる」の登場人物,真賀田四季の伝記小説であって,推理小説ではないという話を聞いていました。
推理小説でないのならばちょっと敬遠したいと思いつつ,森博嗣通の知人に,「もし四季シリーズ中で1冊だけ読むとすれば何がいい?」と聞いてみました。知人の話では,「四季シリーズ4作のうちで,1作だけ読むのならば,『四季 秋』がお薦め」との事でした。「秋」は,「すべてはFになる」では隠されていた真賀田四季の真の動機が明らかになり,さらにVシリーズ最終作「赤緑黒白」のラストでほのめかされた小学生の男の子「へッくん」の正体が明らかにされ,さらに百年シリーズへの橋渡しにもなっている(冬が完全に橋渡しになっているらしいのですが)作品だという事でした。
さて読んでみると,「すべてがFになる」のレゴ人形の意味や事件の真相が明らかにされますが,たしかに推理小説という感じではありません。しかし,S&Mシリーズの犀川助教授と西之園萌絵,Vシリーズの保呂草潤平と各務亜樹良が同時に登場し,S&MシリーズとVシリーズが交錯します。両シリーズをつなぐ作品というわけです。四季シリーズなのに真賀田四季はビデオと萌絵の夢の中にしか登場せず,意外でした。
この作品は,S&MシリーズとVシリーズを読んでいない人が読んでも,さっぱりわけが分からないでしょう。しかし,両シリーズに親しんできた人ならば,興味深く読める作品だと思います。たしかに推理小説ではありませんでしたけれどもね。
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