有栖川有栖の「マレー鉄道の謎」
有栖川有栖の「マレー鉄道の謎」を読みました。有栖川氏の国名シリーズは,短編集が多いのですが,この作品は長編です。
最近は,ミステリーもジュブナイルやユーモアミステリーを主に読んでいたので,本格的な「本格派推理小説」を読んだのは久しぶりでした。(森博嗣作品も読んでいるんですが,世間では「本格派推理小説」として認められている森作品は,実はそうではない様に感じています。森作品のテイストは「本格派」とは違ったものの様に感じているのです。)
さて久しぶりの有栖川有栖の「本格派推理小説」,読んでいる間,まさに至福の時を過ごしました。
マレーシアの高原リゾートタウン,「キャメロンハイランド」。おなじみの犯罪学者火村助教授と探偵作家の有栖が,大学時代のマレー人の友人に招待されてその避暑地に赴き,トレーラーハウスを舞台とする事件に巻き込まれます。被害者はためらい傷もなく胸をナイフでさされている事,小さなキャビネットの中に死体が押し込められていた事などから他殺だと考えられるのですが,トレーラーハウスのドアや窓は紙テープで目張りがしてありました。トレーラーハウスは密室状態になっていたわけで,それは自殺を疑わせます。しかしその紙テープに死者の指紋が一切ついていないことなど,自殺とも考えられない様な不可解な状況が明らかになります。
そんな事件に影響していると思われる,タイとマレーシアをつなぐマレー鉄道の過去の衝突事件と走行中の列車からの転落事件。それはキャメロンハイランドの死亡事件とどう関係しているのか。
興味津々のストーリーはこのように続いていきます。
最後の方で,火村と有栖をマレーシアに呼んでくれた親友に疑いがかかり,帰国時間のタイムリミット中に事件を解決できるのかというサスペンスも加わり,やがて密室トリックの解明,真犯人の指摘に続きます。
次もまた有栖川有栖作品を読もうと思わせるに足る作品でした。
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