東川篤哉「殺意は必ず三度ある」
いまや「謎解きはディナーのあとで」の東川篤哉ですが,その別シリーズ,鯉ヶ窪学園探偵部シリーズの一作です。
主人公は探偵部の男子高校生3人と女子生徒会長,殺人事件は3件(一件は未遂ですが)。1件目の殺人事件に使用された野球場そのものを使ったトリックは,なかなか面白い。ユーモアミステリーだからこそ使えるトリックかもしれませんが,このような現実感のないトリックが大好きです。
ただこのトリック,野球を知らない人にとっては分かりにくいようです。知人のミステリー好きだが野球に興味の無い女性は,野球場内の位置関係が分かり難く,トリックがよく分からなかったといいます。よく聞いてみると,野球場に対してダイヤモンドが本来はどの位置にあるべきかという事が分からないのですね。謎解き部分には3枚も野球場の図版が出てくるのですが,その前,警察による見当違いの犯行再現実験時点で,男子3人組や警察が認識している野球場の図版が出てきていたら,野球場を知らない人にもストーリー展開がよく分かったかもしれません。
さて犯人についても一ひねり。○○犯人で読者を煙にまきます。メタミステリー的な勘違いを誘う様に仕組まれている作品です。探偵は上述の4高校生かと思ったら,別の登場人物でした。
しっかり本格推理していて,なかなかおもしろい作品でした。
アマゾンサイトにはいろいろな感想がアップされていますが,絶賛している方も居る一方,それほど評価していない方も居ます。基本的に高校生向けと思われるジュブナイルユーモアミステリーなんで,おじさん/おばさん向けではない事を考えるべきでしょう。変な例えで申し訳ありませんが・・・・・最近の「ジャンプ」は面白くないという人が居ますが,「今のジャンプ」と言っている以上,おそらく昔,少年の頃,ジャンプを読んでいたオジさんの感想でしょう。今のジャンプは,そんなオジさんの為の本ではない事を考えて語ってください。
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