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2013/12/26

「レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート」DVD

Le_mis

 姪の娘(3歳)のクリスマスプレゼントに飛び出す絵本を買おうと,代官山の蔦屋書店に出かけました。ここは何しろTSUTAYAですから,レンタルビデオも置いてあるわけです。我が家の近所の店で作ったTpoint cardを使ってこの店でも借りられるというので,「レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート」というDVDを借りてきました。
 これは,今でもロンドンで上演が続けられ,日本でも断続的ではありますが公演が続いているミュージカル「レ・ミゼラブル」がロンドン初演以来25周年になるというので,1日だけ記念コンサートが行われた,その模様を収録したものです。場所はロンドンの世界最大のドームであるO2というところ,時は2010年10月3日で,いまから3年前になります。
 「レ・ミゼラブル」は,台詞が全くない,というより全てのせりふが音楽にのって演じられるミュージカルです。したがって,マイクの前であっても,舞台の扮装をして俳優達が簡単な所作をつけて唄えば,ほとんどフルに芝居を見ている様な状態になります。
 この日のキャストは,ロンドンの現役の舞台のキャストだけではなく,この日の為に集めたキャストです。主役のジャンバルジャンはテナー歌手,もう一人の主役,敵役のジョベール警部は黒人のアメリカ人。どちらも別の舞台でトニー賞(映画のアカデミー賞に匹敵する舞台演劇の賞)を受賞している実力派です。
 その他,何故かアメリカの人気アイドル歌手であるニック・ジョナス(2010年当時では18歳かな)が主役の一人,学生マリウスを演じ,ポップスやロックを唄う時とは全く違うミュージカル的な発声で舞台をつとめているのにおどろきました。まあ,私が昔東京で観た「レ・ミゼラブル」の東京初演時のこの役は,野口五郎が演じていたので,そんなアイドル系の人が演じる役なんでしょうかね。学生達のリーダー,アンジョルラス役のラミン・カリムルーの堂々たる演技・歌唱との比較で,マリウスのあやうさがよく出ていたのはよかったと思います。後で調べたら,ニック・ジョナスは11歳の時,ガブローシュ少年役でレ・ミゼラブルの舞台に立っていたらしいですね。
 このミュージカルは最近映画にもなっていて,ファンテーヌ役のアン・ハサウェイがアカデミー賞を受賞したりしています。その映画版や東京での舞台を観て,またロンドン,ニューヨークブロードウェイのオリジナルキャスト版CDなどを聞いて比較すると,今回の25年記念コンサートの音の厚さは素晴らしいものがあります。俳優達の唄も,演技ではなく歌唱に特化したコンサート形式で素晴らしく,大編成オーケストラの響き,大編成コーラスと相まって,音楽としてはこれ以上無いというレ・ミゼラブルになっていました。東京初演時の舞台は生演奏での公演でしたが,そんな普段の公演では,こんな大人数のオーケストラもコーラスも付いていませんからね。「歌を聴く」という事ならば,オリジナルキャスト版CDよりもこちらの方をお勧めします。
 映画版は多少映画のリアリズムを意識して,余り声を張らずに演技に重点を置いている様なところがあります。唄が歌えるとは思わなかったヒュー・ジャックマンやラッセル・クロウが唄っているのだからとも思いましたが,今回のコンサート舞台と映画の両方でエポニーヌを演じたサマンサ・バークスでさえそんな感じがしました。だから意識的に映画と舞台ではそのような異なった演出がなされ,そのように演じているのでしょう。彼女が唄う有名なナンバー「On My Own」を,舞台と映画で比べてみてもそう感じます。
 このミュージカルは,学生達のフランスでの王制への抵抗運動が重要なモチーフになっています。私はこれまで長い間,いわゆるフランス革命,あのマリーアントワネットとルイ16世の時代の話なのかと思っていました。
 ところが今回調べてみると,そうではないんですね。マリーアントワネットが処刑されたフランス大革命はずっと前に起こっており,その後の第一共和制→ナポレオンの帝政→ブルボン王制復古(ルイ18世,シャルル10世の時代)→7月革命と続き,7月革命で即位したルイ・フィリップ王の時代の抵抗運動だったのです。この時代,「国民の王」といわれたルイ・フィリップ王ですが,「市民」といってもいわゆる金持ち(ブルジョアジー)を支持基盤とした王制で,労働者や貧しい人々の不満が高まっていって,各地で抵抗運動が行われていました。超の付く不況,コレラの流行,貧民街は特にひどかった,民衆寄りだった政治家ラマルク将軍もコレラで亡くなってしまう。レ・ミゼラブルはそんな時代を背景にしているのです。学生達のせりふ(=歌)の中にも,「敵は国民の王だ」という言葉があり,ルイ・フィリップ王の時代だと分かります。
 その後2月革命が起きてこの王制は崩壊し,第二共和制→ナポレオン三世の時代へとフランスは進んでいきます。そんな7月革命から2月革命の間の,貧しい市民の不満が噴き出している時代を背景にしたものだったわけです。
 このDVDをきっかけにして,フランス史をちょっと勉強してしまいました。

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