東京都庁の展望室で考えた都知事選の事
昨日,新宿の都庁展望室へ行った事を書きましたが,この展望室を見回しても,近づいてくる都知事選挙の事を思い出すようなポスターなり雰囲気なりは全くありませんでした。
この都知事選,小泉−細川陣営は「脱原発」を掲げて争点にしています。これについて,違和感がありました。東京都は,原発で作られた電力の最大の消費自治体であるものの,原発が立地しているわけでなく,政府の専管事項である原発の事など,一地方自治体がもの申すのはいいとしても,「それを知事選挙の争点にしてどうするのよ」という気がしていました。私に限らず,私の周りの人の意見を聞いても,そんな事を言う人が多いわけです。
ところが,地方自治体の首長経験者や国会議員などの意見をネットやテレビなどの報道でみるにつけ,脱原発は案外東京都知事選の争点になりうる事なのだと思えてきました。
まず東京都は,国から地方交付税の配分を受けずに自治体が自前で財政運営できる不交付団体です。つまり,国のご機嫌をとらずに主張できる自治体なのですね。さらに東京都以上の年間予算規模をもつ国家は,世界に30カ国も無いという程の自治体です。首長経験者や政治家にいわせると,東京都の意見というのは国政を左右する程の力を持っているという事になるそうです。むしろ,原発問題が国レベルの現在の大きな問題になっているのならば,都知事選の争点にならない方がおかしいと考えている様です。
また,東京は地方の努力により生かされているという事もあって,その事を考えると,東京だけの問題を考えればいいというわけではないと思います。東京都民は東京以外の地方の事にも責任があるという事を,原発を争点にする事を理解するかどうかで試されているという事でしょう。
そもそも東京都は東京電力の大株主ですから,その責任もあるでしょう。
小泉元首相や細川元首相はそこら辺をよく知っていて,脱原発を知事選の争点にして何ら違和感がないのだと思います。
しかし細川氏が知事選で当選するのかというと,なかなか難しいでしょうね。70歳を超えた高齢,20年の政治的なブランク,猪瀬元知事に似た献金疑惑で退陣した首相である事,脱原発を標榜するとしても急にできるとは思えないという大多数の有権者の意識など,いろいろと選ぶのをためらわせる情況があります。
知事選での対抗馬である舛添氏は,原発問題だけを争点とするのではなく,オリンピックにも絡んだ都市計画,福祉対策,消費増税に対応した貧困層への対応などなど,争点とするところはもっと別のところにあると言っています。共産党も同じような事を言っています。まあ小泉ー細川陣営との違いを明確に表すには,そういわざるを得ないというところがあります。しかし最近の地方首長経験者や政治家の話を見聞きする限り,東京都知事選の争点として,脱原発問題を選ぶ事は間違いではないらしいという気分にはなりました。
ただ,今のところ私のように脱原発を都知事選挙の争点にするのは違和感があると思う人が多いように思われ,脱原発で選挙戦を勝利するには,私のような一般庶民のその違和感を解消する努力が必要だろうと思います。しかしこれから選挙までの間に,どのくらい一般庶民を啓蒙することができるのだろうか,ちょっと疑問に思います。
単純に考えても,電力の日本最大の消費地の知事選で,自分達が使っている電力を原子力発電でまかなうべきかどうかを争点にするのは,実にもっともな話だと思います。
また前述のとおり,国から地方交付税配分を受けずに自前で財政運営でき,国の顔色をうかがう事なく意見が言える希有な自治体である東京都の知事が,重要な問題に対して国と同じ意見をもつ人だというのは,何だかもったいない様な気もします。
しかし多分,何事も中庸なチマチマした公約を掲げる候補者が当選するんでしょうね。そういうチマチマしたことは,誰が当選してもやらざるを得ない事で,むしろ公約の終わりの方に掲げるだけで十分だと思いますが,それを争点にするというオカシサを感じます。
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