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2014/05/27

グレゴリー・ザッカーマン「史上最大のボロ儲け」

Boromouke

 このブログでは珍しく,推理小説以外の本の紹介です。
 この本は,リーマンショックを招いたサブプライムローンの破綻事件で,数々の金融会社が破綻していく中にあって,同じサブプライムローンを題材に1年で150億ドル(ドルですよ。円に直せばゼロがさらに2つ付くわけです)を稼いだジョン・ポールソンという投資家(金融会社のオーナー)をメインに据えて,さらに同じ様な発想でサブプライムローンの破綻を見越して,それを前提にして儲けようとした何人かの投資家の当時の動向を描いたノンフィクションです。
 著者のグレゴリー・ザッカーマンという人は,ダウ・ジョーンズ社が発行する有名な経済新聞,ウォールストリートジャーナル紙の記者だそうです。書き様によってはもっとドラマティックに描けるかとも思うのですが,新聞記者らしくそんな描き方をしていません(とはいえ,ポールソンを初めとして,登場人物達の感情の動きはそれなりに記載されている)。また,サブプライムローン破綻に関してよくありがちな,誰かを悪者にする事も無く,事実を淡々と述べているところに好感が持てます。
 株の世界では,業績が上がり株価が上がると予想される会社に投資するというのが普通ですが,それに反して株価が下がると予想される会社の株で儲ける空売りという手法があります。証券投資の世界でも,下がると予想される証券で儲ける事ができます。この本の主人公達も,サブプライムローンの破綻を見越し,CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という一種の保険を購入する事によって,サブプライムローンの破綻とそれに関連する証券の値下がりで儲けようと画策します。ところが,同じ読みをしてCDSを購入したにもかかわらず,成功したポールソンと成功しなかった他の人たちが居て,そこら辺が面白いところです。
 この本を読むと,このような金融で儲ける事がいかに下らない事なのか,よくわかります。ゲームとしては面白いのですが,まあ言って見れば競馬や競艇のようなギャンブルです。もちろん,それは面白いのです。しかしまあ,仕事として行うようなモノではありませんね。しかし私は,ゲームかギャンブルとしてやりたいですよ。だって,面白いんですから。

 なお,結構な厚さのこの本を読むにあたって,予備知識を得るために,中空麻奈著「早わかりサブプライム不況 」(朝日新書)という薄い本を読みました。この本については,アマゾン書店のカスタマーレビューで,「所詮は後講釈本」だとか,「アーバンコーポレーションの破綻には著者が在籍するBNPパリバグループが深く関与している(というか事実上経営破綻に追い込んだ)のだが,その点について全く言及なし」などと見当違いの評価を受けている本ですが(だって見当ちがいでしょ,後講釈だからこそ初心者向けとして価値があるのだし,「第1章 世界一簡単にサブプライム問題を解説する」などというところから始まる初心者向けの本に,アーバンがドウシタコウシタなどという個々の事例が細かく書いてあると思う方がどうかしている),サブプライム問題の概略を勉強するにはもってこいの本だと思います。

 さらになお,同じようなテーマの本として,マイケル・ルイス著「世紀の空売り」というのがあるんですが,実は最初はそれを読もうと思ったのです。ところがこちらの本は,文春で文庫本になっているのですが,Kindle化されていないんですよね。そこで,電子書籍になっている本書を読んだ次第です。作家であるルイスが書いた方は,新聞記者のザッカーマンの本よりドラマティックに描かれてあるそうで,こちらも読んでみたいんですがね。

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