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2014/08/13

黒岩涙香の「幽霊塔」を読みました

Yureito 先日読み始めたことを記事に書いた黒岩涙香の「幽霊塔」。やっと読み終わりました。
 主人公の先祖が建てた幽霊塔。主人公の叔父がそれを買い取るという話しが持ち上がり,主人公がその幽霊塔を見に行きます。そこで出会った謎の美女。だれも幽霊塔(時計塔)の時計の動かし方を知らないと言われているのに,この美女は時計を動かす方法を知っていた。この時計塔に隠されているといわれる宝物,謎の美女の正体,殺人事件の真犯人は?などなど,謎が謎を呼ぶ冒険サスペンス小説です。
 最後の方で,時計塔の秘密の入口から内部に入り込む主人公の冒険は,ドラクエ等RPGのダンジョンでの冒険を文章に書いたらこんな風になるのだろうと思われる様な楽しさ。そして物語はしっかりハッピーエンド,大団円となって終わります。
 新仮名使いではありますが,「爾して」「屹っと」「夫が」「蔵す」「燦々と」「纔かに」など,なかなか難しい漢字が現れます。ちなみにこれらは「そうして」「きっと」「それが」「かくす」「きらきらと」「わずかに」と読みます。「爾して」など,一文字多くなるのもの「そうして」とカナで書いた方が余程早いと思われるのに,涙香先生はご苦労にも難しい漢字を原稿用紙に書いたんですね。これらのむずかしい漢字は,必ずしも振り仮名を振ってあるとは限らないのですが,Kindleでは,この漢字部分を指でなぞると辞書が開き,読みがわかります。これは大変便利でした。
 そもそもイギリスの女流作家,アリス・マリエル・ウィリアムソンの「灰色の女」を翻案したこの作品,登場人物は全て日本人の名前になっています。だから当然舞台は日本になっているのだろうと思って読んでいったのですが,なんと舞台はイギリスのままなんです。だから「街へ帰る」などというのは「東京」へ帰るのではなく,なんと「ロンドン」へ帰るのです。イギリスを舞台にしてイギリス人が活躍するのに,登場人物たちの名前が丸部道九郎だの松谷秀子だのという日本人名になっているのが奇妙でした。
「幽霊塔」は江戸川乱歩版もあって,こちらも日本人名になっているらしいのですが,乱歩版もイギリスの話しにしているのかどうか,読んでみたいものです。

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