青崎有吾の「体育館の殺人」
青崎有吾の本格推理小説「体育館の殺人」を読みました。
神奈川県立風が丘高校の体育館を女子テニス部が使用しているとき,幕が下りていた舞台上で放送部の男子高校生の刺殺死体が発見されます。舞台に続く二つの扉のうち,一つの扉には鍵がかかり,もう一つの扉の外には人が居て,刺殺された時刻にはだれも出入りしていない事が明らかになります。体育館の舞台外のフロアではテニス部メンバーが活動中で,彼らに見られずに体育館フロアから舞台上へ行くことはできません。したがって,この事件は密室状態での刺殺事件という事になります。
この事件を,学力は学年一番だが,日常生活上はかなり問題ある男子生徒が探偵役となって,テニス部の女子部員や学校内の情報通の新聞部の女子部長と一緒に解いていく・・・という物語です。
高校が舞台で主要登場人物が高校生なので,ジュブナイル系,ラノベ系のライトミステリーかと思いがちですが,結構しっかりした本格派推理小説です。刺殺犯人の裏に,さらに裏の犯人がいるという構成はなかなかのものです。
この作品,高校生名探偵のかなり細かい推理が楽しめます。同じ高校生を主人公にした論理的ミステリーとして,「氷菓」のシリーズを思い出しますが,「体育館・・・」のほうは密室殺人事件という分かりやすい謎で,はるかに普通の推理小説になっています。
著者はまだ20代前半の若い作家ですが,推理小説としては同じ高校生メンバーを起用した「水族館の殺人」と短編集「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」が上梓されています。今回の体育館はなかなか面白かったので,次の「水族館」への期待が膨れます。
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