早坂 吝「○○○○○○○○殺人事件」
あるネット上のサイトのオフ会。まずメンバーが小笠原の父島へ向かい,そこから自家用ボートでメンバーの一人が持っている小島に向かうところから話が始まります。
島の主は,交通事故にあって以来仮面をかぶりこの小島に隠棲している人物。その小島でのオフ会は,すでに数回行われている模様。今年も例年と同じように楽しいオフ会が行われると思ったら,小島の主の妻とメンバーの一人が自家用ボートで失踪。妻の書置きから,駆け落ちらしい。ボートもなく,昨日まで通じていた携帯電話も通じない状況の中,島の洞窟で殺人事件も起きてしまいます・・・・・。
メフィスト賞受賞作品です。メフィスト賞というのは,乱歩賞のように新人作家に与えられる賞ですが,蘇部健一の『六枚のとんかつ』が受賞している事から分かるように,ちょっとひねった作品が受賞する賞です。
この「○○○○○○○○殺人事件」は表題からしてそれっぽいのですが,一般的にはバカミスと言われています。まあ明かされると「思ってもみなかった」というようなアイデアが盛こまれており,まあ綾辻行人や有栖川有栖や法月綸太郎は書かないだろうなというアイデアで,その犯人特定の証拠も,まあ普通の推理作家は書かないだろうなというものです。その意味でバカミスと言われるのでしょうが,それでもやはりかなりまともな本格推理小説です。
しかしながら,「仮面をかぶっている人がその通りの人なのか」とか,「洞窟の殺人事件の犯人は誰なのか」とか,「駆け落ちした二人は生きているのか」とか,そんな当たり前の謎はあるものの,途中の謎要素が少なくてちょっと不満です。
中心のアイデアが明かされたときの驚きと笑いに寄りかかっているミステリーで,まあこんな作品もあるさというものでした。ちなみに題名の○の部分には,あることわざが入ると初めに著者からアナウンスされますが,まあそれほどの趣向でもありませんでした。
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